ヴォルビリスの古代遺跡(モロッコ)

メクネス~ムーレイ・イドリス~ヴォルビリス

モザイクに彩られたローマ時代の遺跡がモロッコにある。2014年、行ってみた。
古都メクネスから30~40分ほどオリーブ畑が広がる丘陵地帯を行く。ヴォルビリス(Volubilis)に入る途中、1つの岩山にびっしりと頂上まで家が立ち並んでいるちょっと異様な街がある。

ムーレイイドリスの街並み

「ムーレイ・イドリス」という古都で「聖者(ムーレイ)の街」と呼ばれているそう。8世紀末に現在の中東のイスラム王朝アッバース朝を追われたイドリス1世がここに王朝をたてた。この街も結構古い。丘は聖地だそうだ。

開けた丘の上に残るモザイクの街

横目に眺めながら先に進むと、前方に柱や壁の遺跡が遠望できる。ヴォルビリス遺跡は丘陵地帯の中にポツンと見えた。


駐車場から入口の南東門をくぐって階段を下りていくと、目の前に遺跡群が広がっている。川を渡って坂を上ると遺跡の中に入る。

ヴォルビリス遺跡の入口

遺跡に入って見ると、これが意外と広い。というか、広大な都市だったようだ。まず「オルフェウスの家」へ。石積みが密集しており、どこが家の境目なのか、よく分からない。


ここのモザイクは保存状態がよく、ギリシャの吟遊詩人オルフェウスの神話にちなんでいる。オルフェウスの弾く竪琴の音に集まってきた森の動物たち。ちなみにオルフェウスは星座の琴座になっている。


「ガリエヌス帝の浴場」もどこがどう浴場だったのか判然としないが、床下にお湯を通してサウナのようにしていたという説明はなんとなく想像できる。
サウナは低温、高温、冷温の3室があったという。足元に気をつけながら進むと「オリーブ圧縮工場」。石臼が置いてある。

ガリエヌスの浴場

この街は紀元前1世紀ごろにベルベル人の部族がカルタゴの都市の上に築いたといい、ローマの時代を経て現在にも続くオリーブの産地だった。
街の名前の由来は、このあたりに多い「夾竹桃」。ローマ時代には「4万人ぐらいが住んでいて、オリーブオイルやワイン、小麦などをつくっていたといいます」とガイドはいう。


3世紀末ごろにローマが撤退したが、6世紀ぐらいまでは人が住んでいたらしい。その後、この街はメクネスなどの街づくりの石材の供給場所になったという。1755年のリスボン大地震の影響で瓦礫と化したが、19世紀後半から発掘が行われている。

18世紀の大地震で倒壊したローマ遺跡

街の中心部に入っていく。列柱が立ち並んでいる。「キャピトル」「「ジュピター神殿」と呼ばれる。立っている柱は地震で崩壊していたものを修復した。

キャピトルに並ぶ石柱

ジュピター(ユピテル)はローマ神話で天候をつかさどる神。オリーブやブドウの産地とかかわりがあるのだろうか。いまはコウノトリの格好の営巣場所にもなっている。
隣接して、太い柱とレンガでできた壁がある。こちらは「バジリカ礼拝堂」といい、道を挟んで「フォーラム」という建物がある。
「このあたりには、裁判所、集会所、市場が集まっていたといわれています」という。2世紀ごろの建築で、こちらはかなり頑丈そうだ。

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