カナディアン・ロッキー(カナダ)

エドモントン~氷河ハイウエー~カナディアン・ロッキー~バンフ

1988年冬季五輪カナダ・カルガリー大会の取材から10年以上たち、もう一度、あの山並みを見たいと思って2001年、行ってみた。

この年の世界陸上が終わった直後のエドモントンに着いた。空港から北米大陸を南北に4500㌔にわたって連なるロッキー山脈(Rocky Mountains)に向かう。

カナダ側だけでも2000㌔あり、その中の4つの国立公園(バンフ、ヨ-ホー、ジャスパー、クートニー)を中心としたカナディアン・ロッキー山脈自然公園群が世界遺産になっている。

エドモントンから山中のハイウエーをひた走ると、サスカチュワンT字路という、カナディアン・ロッキー(Canadian Rockies)を縦断する「氷河パークウエー(The Icefields Parkway)」との交差点に着く。

左に行くとバンフ、カルガリーへと続く。右に折れて、ジャスパー方面「アサバスカ氷河(Athabasca Glacier)」に、2時間ほどで着いた。

地球温暖化で年々後退する氷河

アサバスカ氷河は、その奥の山中にある「コロンビア大氷原)」というカナダ最大の「製氷所」から流れ出している。

山に降り積もった雪を長い年月で氷に変えるのが氷原。そこからあふれるように流れ出すのが氷河。湖から川が流れ出るようなものだ。

コロンビア大氷原からは6本の氷河が流れ出しているといい、その1つがアサバスカ氷河。ここでは、雪上車で氷河探索ができるので、人気があるという。かつて使われていたという雪上車が飾られて?いる。

氷河探索に乗った雪上車のタイヤの直径は1.5㍍ぐらいはある。形はバスだが、トラックの荷台に座席を置いている感じで、乗り心地はお世辞にもいいとはいえない。

氷河の先端(河口?)から、上流に遡っていく。右手の山アイスドームが太平洋、大西洋、北極海と3つの大海に注ぎ込む分水嶺になっているという。スケールの大きい話だ。

雪上車の行く手左手にはアンドロメダ山がある。こちらにもスケールの大きなネーミングだ。ゆっくり15分ほど走って、氷河の上に降り立った。

氷河パークウエー沿いの山ではまだ黄葉が始まったばかりだったが、氷の上はさすがに寒い。周囲の山にも氷河がへばりつき、いまにも落ちてきそうなものもある。

足下の氷を削るようにして、氷河表面にも水が流れている。大きくはないが、氷の裂け目クレバスもあるので、歩くときは要注意。ガイドが「水はきれいですから飲んでも構いませんが、純水に近いのでお腹には良くないかもしれません」。人間、あまりきれいすぎるものは体に良くないようだ。

まさに「氷のような」冷たい水を手ですくい、忠告通り、飲まずに口をすすぐだけにしておいた。ちなみに、雪上車ターミナルにはこの水をボトリングして売っている自動販売機があるので、お土産に1本どうぞ。

この氷河、地球温暖化の影響で世界中の氷河同様、年々後退しており、山を削って運んできた土砂だけが下流にどんどんたまっている。ターミナル周辺の土砂の山をブルドーザーでならしていた。

氷河の成分が作り出す水の色

アサバスカ氷河を見た後は、宿泊するバイフに向けて氷河ハイウエーを走る。

ボウ峠でバスを降り、山道を散策がてらブラブラ歩くと、眼下に青い湖が現れる。「ペイトー・レイク(Peyto Lake)」で、光の加減によっては鮮やかな水色に変化する。

展望台になっており、記念撮影には絶好のポイントだ。

カナディアン・ロッキーには、青い水をたたえた湖が点在する。湖の色は「氷河の中にあるマウンテンフラワー(岩粉)の量が影響している」と、ガイドが説明した。多いと乳白色に、少ないと青みが増すという。細かな粒子が光の反射を左右し、それぞれ独自の色を生み出しているようだ。

バンフに戻る途中、もう1つ有名な氷河が見られる。山腹に張り付くようにある「クロウフット氷河(Crowfoot Glacier)」。

カラスの足のような形をしているところから名付けられた。もともとは3本の細長い氷河が分かれて流れ出ていて、3本の指のようだったというが、すでに一番下の氷河がなくなって指は2本に。これも地球温暖化の仕業のようだ。

その下に青い水をたたえるのが「ボウ・レイク(Bow Lake)」。バスの中からでも、そのきれいな色は目に焼きつく。

宿泊先のバンフの街に入る前、独立峰といってもいい「キャッスル・マウンテン」が車窓から見える。カルガリー方面から来るルートでは、カナディアン・ロッキーの玄関口にあたっている。

名前の通り、中世ヨーロッパの城のような印象を与える。なんでも、米大統領アイゼンハワーに敬意を表して「アイゼンハワー山」と命名しようとしたが「大統領が命名式をゴルフで欠席したのにカナダ側が怒って今の名前になった」とガイド。山容をみれば「キャッスル・マウンテン」がふさわしい気がした。

翻訳違いから生まれた名の滝

翌日、カナディアン・ロッキーを彩る水の景色を巡った。

早朝に行ったのが「エメラルド・レイク(Emerald Lake)」。その名の通り、深い青緑色の湖水をたたえている。本線道路からは少し離れ、ほとんど観光客がいなかったので、あたりはシーンとした静けさに包まれ、自分の声も響きそうだった。

カナディアン・ロッキーの歴史を説明してくれるガイドがよく口にするのが、ヘクターとウィルソンという、2人の探検者。そのヘクター氏が思わぬ命名者になったのが、エメラルド・レイクから近い「タカカウ滝(Takakkaw Falls)」だ。

ネイティブアメリカンの案内で訪れた際に滝の名前を聞いたが、滝を見た感想を聞かれたと思ったネイティブアメリカンが「タカカウ(なんて素晴らしい)」と答えたという。

確かに、豪快な滝だ。滝の近くには川の流れで岩が削られ、橋のようになったナチュラルブリッジが不思議な姿を見せている。

山脈を彩る水の光景

「神秘の湖」と言われる青みがかった緑色をした「レイク・ルイーズ(Lake Louise)」は有名な湖の1つだ。正面にあるビクトリア山から氷河が下っており、その水をたたえている。湖畔のホテル、シャトー・レイク・ルイーズもよく知られている。

カナディアン・ロッキーの中でも秀逸とされているのが「モレーン・レイク(Moraine Lake)」。 レイク・ルーズから山道を進み、車止めから徒歩で山を上っていく。歩いていると、リスなども寄ってくる。

視界が開けると、目の前には「テン・ピークス」と呼ばれる10の頂が連なる山並み、その下に青い色に輝く湖面。「カナディアンロッキーの宝石」とたたえられる。この風景は、カナダ20ドル札の絵柄になった。そのへんの岩に座って眺めていると時がたつのを忘れる。

3000㍍級の山が連なるとはいえ、ヒマラヤのエベレストを筆頭に7000~8000㍍級の山が連なる圧倒的な高さや、アルプスのマッターホルンやモンブランといったスター級の山はない。

山に登る人やトレッキングをする人は野生動物はじめ自然を満喫することができるだろう。氷河ハイウエーに沿って点在しているビューポイントから、山や湖を簡単に眺められる。そんな「親しみやすさ」がありそうだ。

モレーン・レイクで、岩に座ってボーッと眺めていたら、リスがすばしっこくこちらに寄ってきた。そんな景色の中で時間をすごせるぜいたくさがある。そして、氷河、湖、滝、川と個性的な形の山々がみせるさまざまな表情は、どうやらほとんどが、水によってつくりだされていることに気付かされる。

1984年登録

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