聖地キャンディ(スリランカ)

シギリヤ~キャンディ~ダラダ・マリガーワ

世界に数本しかないという仏教の開祖、釈迦の歯(仏歯)を祀った寺院がスリランカにある。キャンディ( Kandy)という覚えやすい名前の街に2008年、行ってみた。
シギリヤから車で向かい、途中の道に出ている屋台でヤシの実ジュースを飲んだり休憩したりしながら、4時間弱で街に着いたのは午後遅くだった。仏歯が納められている寺院は「ダラダ・マリガーワ」(Sri Dalada Maligawa)、通称「仏歯寺」という。
寺院の前にはキャンディ湖が広がっており、湖越しにながめながら、カレー中心の遅い昼食をとる。スリランカもインドに劣らずカレーの食文化なので、カレー好きとしてはたまらない。
ガイドが言うには、仏歯寺に行くのは夜だという。「仏歯を見られるのは夜ですから」。1日3回、仏歯を納めた聖堂の扉が開かれる「プージャー」があるという。たぶん、その夜の部に行くのだろう。

仏歯が収まった仏塔を拝む

プージャーを待つ間に、地元で受け継がれているキャンディダンスを見学した。中でも「火渡り」という真っ赤に焼いた石の上を歩くのは、ダンスというより、修行だろう。

日が暮れたところで、特徴ある八角堂を持つ仏歯寺に行く。男女別の荷物検査、X線検査を受け、靴は脱いで中に入る。石造りなので、足の裏がヒヤッとする。

入り口には象の絵が描かれている。毎年キャンディで行われるペラヘラ祭という祭りでは、きらびやかな衣装を着けた象の背中に仏歯が乗せられ、街を練り歩くという。その場面だ。

寺院の中で上がったり下がったり、迷路のような通路を通り、2階に上がる。プージャーの時間は正確には決まっていないようで「ここで並んで待ちましょう」とガイド。既に列になっている。
太鼓と笛の音が合図になって聖堂の開門が分かるようで、ざわつきが大きくなると列が進み始めた。「聖堂に入って仏歯が入った仏塔の前で拝みます。立ち止まらないように」という難しい注文をガイドから教わり、聖堂の扉のところで順番を待つ。
一度に十数人程度が招き入れられ、1列になって仏歯が納められた金色の仏塔を模した容器の前を通るだけ。一瞬立ち止まって手を合わせたが、すぐに進むように促される。

収められているのは釈迦の犬歯

聖堂を出て回り込んでみると、聖堂正面の通路にも人がたくさんいて、遠目に見える金色の容器に手を合わせている。
残念ながら仏歯そのものは見られないが、数年に1度ぐらい公開されるといい、ガイドは見たことがあると言った。「このぐらいありました」と指で長さを教えてくれたが、5㌢ぐらいありそうで、少々大げさなのか、本当にそんなに長いのだろうか…。
ガイドによると、仏歯は2500年ほど前の紀元前543年(諸説あり)に火葬された釈迦の左の犬歯(右の説あり)だという。インドのカリンガ国にあったが、4世紀に敵対国との戦いで奪われないように、カリンガ国の王女(王子説あり)が髪の中に隠してスリランカに持ち込んだ。
遷都などで移動したが、1590年にシンハラ王朝最後の都だったキャンディに落ち着き、当時の王ウィマーラ・ダーマ・スリヤ1世が仏歯を祭る寺院(仏歯寺)を建てて納めた。

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