黄龍風景区(中国)


古寺の裏手に回る。そこに広がっているのは「五彩池」。そこで異様なものを見つけた。石灰岩の池の堰に、石の灯籠が半ば飲み込まれている。


灯籠を建てたときは、まだそこまで池がなかったのだろうが、徐々に池が増えてきて、ちょうど灯籠の所に堰を作ってしまったのが奇観になったのだろうか。交流の成り立ちを表している。
池岸の低い木の枝が、池の水に浸っている所もあり、水中の枝は石灰分が付着して真っ白な綿毛が付いたようになっている。けっこう、石灰が物を覆ってしまうスピードは速そうだ。

色を変えながら連なる池は天国の光景

五彩池の遊歩道をグルッと回っていくと、背後の山に展望台がある。午前9時過ぎに登り始め、たどり着いたのは午後1時少し前。おなかがすいた。
展望台に登ってホテルで用意してくれた弁当(といってもパン、ソーセージ、ゆで卵にザーサイ)を開き、眼下に広がる五彩池をながめる。

透明から緑、青へと色を変えながら、小さな池が連なる。ここまで来て、本当の「黄龍、天下に絶」を味わったといえそうだ。

上から見ると「上流から下流」にかけて、1つ1つの池の色が少しずつ変化していくさまに、思わずうなってしまう。「五彩」というだけのことはある。


下山道をゆっくり下り、途中でまた登山道に戻ってそこを下りながら、1度見た景色を逆から眺めながら下りていくのも、目を楽しませてくれる。
登りに懸命で景色を振り返る余裕がなかったこともあり、下山中も初めて見る風景であきない。池や川のすぐ横を歩け、当時は境界には簡単なロープなどが張られているだけだった。


下っている最中、中国人の観光客が立ち入り禁止になっている池の堰の部分に上がって写真撮影などしていたので、日本語で「出ろ」と言うとしばらくにらまれた。自分の写真を撮るために、自分の国の「宝物」に傷をつけているようでは…。

池の赤ちゃんが無数にある

翌日の午前中、再度黄龍を訪れることにした。天気も前日よりは少し回復して薄日が漏れ、ときおり日差しも顔をだす。
移動日だったのでこの日の散策制限時間は2時間。当然、五彩池までは無理なので、1時間で登れるところまで行き、下りながら見てこよう。


不思議なことに前日は苦しかった息が、うそのように快調。休息なしで「7合目」付近にある「争艶彩池」まで登り切った。人間の体も順応性が意外と高いようだ。


青、緑など見る角度によってさまざまな色に彩られる池、黄色い光沢を放つ岩盤は、この日も目を楽しませてくれた。現在の「本流」の脇には、既に水が流れなくなってしまって薄汚れた堰が、浴槽のように形だけ残っている。
一方で、緩やかな流れの中にはたくさんの落ち葉をつなぎ合わせるようにした小さな「堰」の原型が無数にある。これが池に成長していくのだろう。


100年後、200年後はどんな姿になっているのだろうか。

1992年登録

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