ペトラ(ヨルダン)

エド・ディルに上る道

覚悟を決めて登り始めた。砂地の道から、石段へと変わって、つづら折りや、谷の岩壁に沿うように登っていく。普通にきつい。踊り場や道幅の広いところに土産店があって声をかけてくるが、そこまで気が回らない。ひたすら足を上に運ぶ。

きつい時は、周りの岩壁をみよう。色とりどりの砂岩の縞模様がきれいだ。途中に分かれ道があって遺跡が点在しているらしいが、こちらはエド・ディルに一直線。ときおり、谷間や登って来た方角の景色を見ると、少し元気になる。

縞模様を描く砂岩の岩壁

1時間ほど登って、目の前が開ける。広場のようなところの向こうに店が見えるのだが、肝心のエド・ディルは…右手を見ると、巨大なファサードが目に飛び込んでくる。どうだろう、疲れは吹き飛んだだろうか。


岩壁をくりぬいたとは思えない巨大な建造物。エル・ハズネのような優美さはないが、それでもファサードの細工は簡素ながらも左右対称で調和がとれている。


高さ40㍍、幅50㍍と横に広い。大きく2層になっていて、下部は8本の太さが違う柱が立っていて、大きく入口が開いている。中には入れなかったがのぞくことはできたが、何もなかった。

上部にはエル・ハズネ同様に壺を載せた円形の霊廟(トロス)があり、両側に2つに分かれた破風、両端が太い柱になっている。柱の上部の彫刻はどうやら羽のようだ。

1世紀ごろに造られた神殿らしいのだが、その後修道士が住んでいたということで、修道院(ディル)という名前になったという。元は中に入れたらしいが、転落事故があって今は閉鎖されている。中をのぞいたが、内部の扉も塞がっていて、修道士がどこに住んでいたのかわからなかった。

広場を挟んでエド・ディルを眺めながら、クッションを敷いた椅子に座ってコーヒーを飲む。ここでも至福の時が過ぎていく。どちらが先に造られたかはわからないが、巨大さから言えば、エル・ハズネよりも労力や時間がかかったように見える。店の裏手の少し小高い丘に登って見下ろすようにしてみた。午後3時を回ったところで、下山にかかる。冬の日差しはそろそろ傾き始めている。

全く表情を変えたエル・ハズネ

石段を下り(これも足にくるのだが)、凱旋門からメーンストリートを戻る。行きに見た「王家の墓」は斜めの日差しを浴びてくっきりと赤く見えている。再び、エル・ハズネに着いた。
この時間になると、もう日差しを受けていない。朝見たときは赤かったエル・ハズネだが、夕方になると白っぽくなる。印象は全く違う。やはり見るなら午前中、朝の光があるときがいいだろう。

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