
ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂(イタリア、ヴァチカン) 大聖堂
目次
ローマ・テルミニ駅~サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂~サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂、サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂~真実の口~サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会
ローマとヴァチカンに数ある聖堂の中でも「4大バシリカ(大聖堂)」が世界遺産に登録されている。2017年、四半世紀ぶりにローマに足を踏み入れたので、4大バシリカのうち、前回1991年に見なかった2つの大聖堂に行った。
ローマ・テルミニ駅前の「チンクエチェント広場」からカヴール通り(Via Cavour)を少し下ると、左手に大きな聖堂が見えてくる。「サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂」(Basilica di Santa Maria Maggiore)だ。
広場にオベリスクが立っている。ただ、階段は見えるがその下には柵があって上がれない。一瞬、休みか、と思ったが、大聖堂に休みはたぶんないだろう。いた人に聞いたら、入口は反対側だというので回り込んだ。朝日を浴びた大聖堂のファサード(正面外壁)に「さすが4大バシリカの1つ」とうならされる。
圧倒する鐘楼、豪奢なファサード
大聖堂の広場から外観を見る。裏から見たときには2つのドームが見えたのだが、正面広場からは建物全体が高すぎるのか、目立つのはローマで一番高い75㍍の鐘楼だ。
大聖堂のあるのは「エスクイリーノの丘」というローマでも高い方の丘なので、かつてはローマ中からこの鐘楼が目印になっていただろう。
壁や窓枠は人物や紋章など彫刻で飾られている。正面の2階?はテラスのような開廊「ロッジア」があり、3つのアーチの隙間から、奥に暗くてわかりにくいがモザイク画があるのが見える。有料だが上がることも可能だったことを後で知った。
正面も柵で仕切られていて、大聖堂内には右手入口でセキュリティーチェックを受けてから入る。朝早い時間帯だったが、もう人はたくさん来ていた。荷物をスキャンする程度であまり厳しくなかったので時間はそうかからなかった。すぐ近くから見上げると、また大きい。
天井、壁面、床に注目を
中に入ると、その大きさにまずびっくりする。前に広がるのは身廊という。両側に古代ローマの神殿から移された柱36本が立っている。なにより、天井が格子状の格天井になっていて、たぶん金が張られているのだろう
柱の上の壁面にはびっしりと絵が描かれている。モザイク画で旧約聖書の36の物語。5世紀の作品だという。
身廊の両側には側廊があり、これもまた天井がきれいに装飾されている。はっきり、くっきり見えるのは、明かり採りがあるのだろうか。身廊、側廊ともに明るいので、モザイク模様の床も見落とさないで歩こう。
側廊には、多くの礼拝堂や絵画などがある。入口の所に、大聖堂のレイアウト図があったので参考までに。
身廊の奥が後陣。祭壇がある場所だ。後陣の前にあるのが装飾豊かな「飾り天蓋」。その奥の天井には13世紀に描かれたモザイク画「マリアの戴冠」がある。飾り天蓋から先に行けなかったので、写真はうまく残せなかったが。
地下で大切にされている聖遺物
この大聖堂は、5世紀前半のシクストゥス3世の時代にできた教会が起源という。4世紀に法王の夢にマリアが現れて、雪が降ったところに教会を立てるように言われ、実際に真夏にここで雪が降ったという伝説も残っているそうだが。
以後、増改築が重ねられて今の姿になった。時代時代の建築様式が取り入れられたため、ロマネスクあり、バロックあり、ルネサンスありといった感じなのだという。
天蓋の手前から地下に下りられた。階段には礼拝する法王の彫像。下りると、この大聖堂で一番大切だという聖遺物が見られる。豪華な器のようなものの中に木製のものが収められているが、イエスが生まれたときに寝かせられたかいば桶だという。2000年以上前のものだ。
後陣の手前の左右は翼廊で、2つの礼拝堂がある。その天井が、裏側から大聖堂を見たときに見えた2つのドーム(クーポラ)になっている。後陣の左手が「パオリーナ礼拝堂」。ミサをやっているからか、いつもなのかは分からないが中に入っての撮影はできなかったので、外側から撮ってみた。

パオリーナ礼拝堂
後陣の右手が「システィーナ礼拝堂」。真ん中には4人の天使?女神?が聖堂を持ち上げているブロンズ像があった。
壁や天井には、宗教画や彫刻で飾られている。両側に壁には、礼拝堂の名前の由来になった法王シス5世とピウス5世の墓もある。
側廊にある小さな礼拝堂などを見ながら戻った。出入口に近い右手には「洗礼堂」がある。受けたことがないのでわからないが、荘厳な雰囲気はした。

洗礼堂
さらに巨大なファサードに圧倒される
サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の前にある大きな通り、メルラーナ通り(Via Merulana)をまっすぐ歩けば、次の大聖堂「サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂」(Basilica di San Giovanni in Laterano)までは一直線で行ける。たぶん、20~30分ぐらいだろう。
この日はサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂から「フォロ・ロマーノ」や「コロッセオ」を見て、コロッセオから伸びる「サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ通り(Via di S.Givanni in Laterano)」を歩いて20分ほど、メルラーナ通りとぶつかった交差点の目の前にオベリスクが見えてくると「サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂」の裏側に着く。どちらからでも歩ける。
右のレンガ入りの建物はラテラーノ宮と地図にはあった。かつてローマ法王が住んでいた宮殿だという。

サン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂裏手のオベリスクとラテラーノ宮(左奥)
ここも反対側に回り込むと、かなり大きな広場を前にした巨大なファサードの下に出る。聖堂というよりはこちらの方が宮殿ではないかと思える。
屋上に注目。中央にイエスの像で15人の聖人の像を従えている。ファサードは18世紀にアレッサンドロ・ガリレイが製作したという。
この教会も無料だが、手荷物検査を受けて入る。ファサードの下から見上げるとその高さを実感する。
入口にはいくつか扉がある。青銅製の締まっている扉があったので、これが聖年にしか開かない扉かと思ったが「クーリアの扉」というものだった。脇にはたぶんローマ皇帝コンスタンティヌスの像があった。
法王のためだけの祭壇が中央に
入ると大広間。その広さ、高さに驚かされる。両サイドには聖人たちの彫像が置かれている。天井は細かな彫刻が施された格天井で金色に光っている。
正面には豪華な祭壇がある。この祭壇はローマ法王(教皇)専用のものだという。1367年にジョヴァンニ・ディ・ステーファノによって造られた。祭壇内部には、聖遺物として聖ペテロと聖パオロの頭蓋骨の一部が収められているそうだ。
祭壇の奥、後陣にはドーム状になった天井にはモザイク画が残り、上部の神と天使の画は4世紀、下部の十字架と聖母マリアと聖人たちのものは13世紀の作品だという。
後陣の両側の壁には、大きなパイプオルガンがしつらえられている。テラスのようになっているところで弾くのだろうか。壁面の彫刻や装飾には目を奪われる。
ローマの教会では最古で最上位
この教会は314年にキリスト教を認めたコンスタンティヌス帝が建てた。1309年に法王がフランス王によってアヴィニョンに拉致される「アヴィニョンの捕囚」まで歴代法王はここに住んでいた。法王はローマに帰ってきてからはヴァチカンに住んでいるが、今でもローマの教会の中では最上位に当たるという。
法王がいなかった時代に荒れたが15世紀以降、改築や補修が行われて様々な建築様式の建物になった。1650年の聖年に向けてボッロミーニによって大改修を行われ、今の姿になる。
名前の由来はラテラーノ家の土地だったこと。悪名高い皇帝ネロに謀反の罪をかけられて土地を没収され、コンスタンティヌス帝が邸宅として使っていた土地に自ら教会を建てて寄進した。ローマ最古の教会ともいわれる。
大広間の横には側廊があり、たくさんの礼拝堂がある。その中でもきれいだったのが、イエスの最後の晩餐の様子を金の彫刻であしらっていた礼拝堂。金と青の格天井も見事なものだ。
いくつかの礼拝堂の見ながら出入り口に戻る。キオストロ(回廊)に囲まれた中庭があるのだが、入口を通り過ぎたのか、別に入口があるのか、もう閉まっていたのか、見過ごしてしまった。
外に出て教会前に広場に面して変わった建物があった。聖堂らしい。ファサードの上部にあるモザイク画が目を引く。入れなかったが(もともとキリスト教徒以外は入れないらしい)、中には「スカラ・サンタ」という聖なる階段がある。
エルサレムのピラト邸で死刑判決を受けたイエスが、十字架を背負ってゴルゴダの丘まで歩いたことは、エルサレムの項で紹介した。その時にピラト邸で降りた階段をコンスタンティヌス帝の母ヘレナが見つけてここに移したという。
地下鉄サン・ジョヴァンニ駅から10分かからないほどなので交通の便もいい。駅に歩いていると、かつてのローマの城壁をくぐった。
4大バシリカを目にする
「4大バシリカ」のうち、ヴァチカンのサン・ピエトロ大聖堂は別掲するが、もう1つが「サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂」(Basilica di San Paolo fuori le mura)。前回の1991年にローマに来た時に、バスツアーで行った。ローマ旧市街からは少し離れている。
コンスタンティヌス帝が4世紀に聖パウロの墓をまつるために造った。19世紀初めに火災によってほとんどが焼失し、その後に立て直されたもの。ファサードにある金色の壁画が印象的だったが、1枚しか残っていなかった写真が不鮮明で申し訳ない。
この記事へのコメントはありません。