タラゴナの遺跡群(スペイン)

バルセロナ~タラゴナ郊外

ローマ時代の水道橋を歩いて渡れる。そんな橋がスペインにある。2015年、行ってみた。
バルセロナからバスで1時間半ぐらい。タラゴナ(Tarragona)という古い街がある。その郊外の谷に「ラス・ファレーラス水道橋」(Aqüeducte de les Ferreres)が渡されている。駐車場から遠望できるが、せっかくだから「渡り」に行った。
野道を歩いて、10分もかからないところが橋のたもと。道すがら、木々の間から見え隠れするこの水道橋、2階建てになっている。橋のたもとに行くと、谷間の底からアーチ状に組まれた橋脚が、意外と巨大なことに気づく。

水道橋の上を歩く

水道橋の端に立つと、歩く部分はかなり狭い。人がすれ違うには互いに体を横向きにしないといけないぐらい。「狭いよなあ」と思ったが、元々人が歩くためにはつくられていないのだから仕方がない。


今歩こうとしている部分は、2000年前には水が流れていた。さっそく、橋の上に入ってみた。
傾斜はわずかしかないので、ほとんど平坦と思っていい。橋の欄干にあたる両サイドの壁から身を乗り出すようにして、戻ってくる人たちとすれ違いながら進んだ。
下をのぞくと、かなりの高さがある。レンガを積み上げ、組み上げて造られている。今までもいくつかローマ時代の水道橋というのを見ているが、こんなきれいなアーチが2段になって続いているのは初めて見た。


ただ、2000年前のものだけに、こんなに人がのって大丈夫なのだろうかと一瞬思った。たぶん、30人ぐらいのっている。人が通るのではなく、水を流すためのものだったのだから、強度はどうなんだろうと思ったが、もうかなり来てしまったので、覚悟して先に進んだ。景色はかなりいい。ちょっともやっていたのが残念だが、空気が澄んでいたらかなり遠くまで望めそうだ。

「悪魔の橋」とも呼ばれた

紀元前3世紀にローマ帝国が当時タラコ(タッラコ、Tarraco)と呼ばれたこの街を築いた。この街に水を供給するためにつくられたのがこの水道橋。シーザーの後に皇帝になったアウグストゥスが造ったという。
今残っているのは長さ210㍍、高さ27㍍の部分だけ。2段になっていて、下段に15、上段に27のアーチがある。
セメントなどがない時代に、レンガを積み上げてつくられた。「悪魔の橋」という呼び名もあるという。


「難工事で困っていたところに悪魔が来て『一晩でつくってやるから、最初に渡る人の魂をもらう』と工事監督にささやき、それを受け入れたということです」とガイドは説明した。
最初に渡った人は誰だったのだろうか。とても一晩で出来上がったようには見えないが、完成させるにあたっては何か劇的な出来事があったのかもしれない。
今回見たのは水道橋だけだったが、遺跡群と名前がついているように、近くのタラゴナの街中には円形劇場などいくつかのローマ遺跡が残っている。
ローマ帝国時代の遺跡は欧州や北アフリカにはたくさん残っている。どの街でもインフラ整備がしっかりしているのには感心する。

2000年登録

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