
アグリジェント(イタリア)
パレルモ~アグリジェント新市街~神殿の谷
シチリア島の歴史は古い。ギリシャ時代に建てられた神殿がある。2016年、行ってみた。
シチリア島の北にあるパレルモから、ツアーのバスで約2時間。南下して島の南側、地中海に面したアグリジェント(Agrigento、アグリージェント)の新市街に着く。
ギリシャ時代の遺跡があるのはその街の郊外の丘の斜面。上っていくと、遺跡の建物や柱が点在しているのが遠目に分かってくる。このあたりは「神殿の谷」と呼ばれている。

2500年前に造られた派手な神殿
バスを降りて、最初に行くのが「ヘラ(ユーノー)の神殿」。ギリシャ神話の最高神、ゼウスの妻の名前がついている。

巨大な柱が整然と立っている。「柱はドーリア式で、縦に溝が2重についています」とガイド。柱の頭の部分に彫刻された丸い石があり、その上に梁の横柱が載せられている。

古代ローマの神殿のような大理石の柱ではない。「隣にある山から切り出してきた砂岩で造りました」という。正面の柱は6本。ドーリア式の特徴だという。

この神殿は紀元前5世紀ごろに造られたという。日本だと縄文、弥生時代だ。元々は「外側が赤い屋根があって、屋根の内側は青に塗られていた。かなり派手な神殿だったようです」。

ヘラは結婚生活を守護する神でもあった。「かなりのやきもち焼きだった」という。神殿の谷にはこうしたギリシャ神話に出てくる神々の名前がついた神殿が立ち並んでいた。ギリシャ神話を少し予習しておくとわかりやすいだろう。
古い城壁の使い道は?
ヘラ神殿から丘の上に通っている1本道を緩やかに下っていく。途中に、かつての城壁が残っている。
城壁にはアーチ状に穴が開いている。「さて問題です。この穴は何に使われたでしょう」とガイド。食料の保存庫と思ったのだが、だいぶ違った。

「ここはお墓でした。ビザンチン時代に転用されて、身分の高い人ほど上の方につくられているといわれています」が正解。のぞいてみたが、いまは何も残っていない。砂岩だったので細工もしやすかったのだろう。よく思いついたものだ。

首のない大理石の像も立っている。古代ローマ時代のものだという。頭がないのにも理由がある。「頭は元々つけた状態ではつくっていませんでした。皇帝が変わるたびに、その人の頭を付け替えていたといわれています」。使い回しできるようになっていたらしい。いろいろな博物館などで頭だけとか、胴体だけという彫像があるが、同じ理由からなのだろうか。

夕日に染まるシチリアの代表的な神殿
行ったのは1月下旬で、ちょうどアーモンドの花が咲いている時期だった。見学路の脇にもアーモンドの木があり、桜のような花をつけていた。

花を眺めながら行くと、保存状態がいいというか、建設当時の姿をとどめている巨大神殿が現れてくる。「コンコルディア神殿」という。当時はまだ行っていなかったギリシャのアテネにあるパルテノン神殿がモデルでは、と思った。

シチリア島を代表する建造物なのだという。正面の柱は6本のドーリア式神殿。正面にも背面にも、三角形の破風が載せられている。風化してしまったのか、はぎとられたのか、かつては彫刻、彫像で飾られていた感じもする。

神殿の破風は彫刻で飾られていた
全体で34本の柱、梁の横柱も原型をとどめている。内部にある建物も残っている。紀元前5世紀に建てられ、元々は「カストルとボルックスの神殿」だったという。ふたご座の由来になったギリシャ神話の兄弟だ。
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