メキシコシティ歴史地区とソチ・ミルコ(メキシコ)

儀式の際に生け贄の心臓をおいたというチャックモールの石像が目を引く。チャックモールとは、上半身を起こしてあお向けに横たわり、腹部にその心臓を置く皿や鉢を抱えている人物像。顔つきに似合わず、凄惨な儀式に使われたのだが、当時は神聖な儀式だったのだろう。

心臓を抱いたチャックモール

この神殿も破壊されるまでは、何世紀にもわたって古い建物の上に増築を繰り返している。小さな建物の上に新たな建物を造って大きくしている様子が、発掘中の壁の断面などで分かるという。


2つの大きな塔があったというが、これも基壇しか残っていない。異文化、異宗教を理解しない人間がきたらそこにいる人の暮らしがどうなるか、街はどうなるかという、今にも通じる状況を痛感させられる。
敷地内に博物館があるので、出土品をみられる。ここには、円形の月の神を表す石板「月の石」が展示してあった。

月の石板

このテンプル・マヨールのすぐそばにある国立宮殿の前にはソカロ広場が広がる。真ん中に巨大なメキシコ国旗がはためいている。朝夕に軍が掲揚、貢納を行っている。


ちょうど貢納の時間帯だったのでおごそかな儀式を見ていたが、旗はたぶん、拙宅のマンションの部屋より絶対に大きいと思われる。入れなかったが、国立宮殿内にあるメキシコの歴史を描いた壁画が有名だという。

かつての湖の痕跡は市民憩いの場

郊外には「ソチミルコ」(Xochimilco)がある。埋めたてられたテスココ湖の名残だという。日本の柳川のような水郷で、湖の埋め残し?の運河が縦横に走っているが、雰囲気はさすがメヒコ。船着き場には、女性の名前がついた派手な色合いの屋根付きの小舟がつながれている。世界遺産というイメージではない。
船の中には長テーブルと椅子があり、トルティーヤなどメキシコ料理の弁当にビールなどを持って乗り込んだ。


運河に囲まれた浮島では、季節の花を栽培しており、接岸して降りて買うことも可能。ソチミルコは「花畑」の意味だそうで、アステカ時代は貴族が住んでいたという。
船が進むと、とうもろこしやお菓子、ビールなど飲み物を積んだ船が次々寄ってきて売り込んでくる。色が白くて味がなくマヨネーズをかけて食べる茹でとうもろこしには、北海道育ちとしては大学の農場から飼料用の味のしないトウモロコシをもいで食べたときのようで、ちょっと違和感があったが…。


マリアッチという楽団を載せた船もあり、こちらの船に乗り移って演奏もしてくれる。派手な色の船にゆられるながら「ビバ メヒコ!」という気分になれる。

1987年登録

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