大足石刻(中国)

重慶市~大足県~宝頂山

長江中流部の都市、重慶。慶の字は「がんだれに大」。中国の漢字が簡略化されてきている。ここは北京、上海などとともに政府の直轄市となっており、面積は北海道ぐらい、人口も3000万人ぐらい(当時)というから相当広い。
巨大ダム、三峡ダムができて景勝地三峡がだいぶ沈んでしまうというので、三峡下りの玄関口である重慶に2000年、行ってみた。
いまはダムも完成した。工業都市として習った記憶があるが、ガイドによると、それは元の重慶市で「直轄市になるために周辺の町を合併したので、ほとんど農村」という。

芸術性の高い1万体の石刻群

その重慶市内に、「大足石刻」がある。「これから行くのは、重慶市内にある大足県です」。日本とは市と県の使い方が逆なようだ。車で約2時間ほどで「宝頂山」というところに着く。

 

この大足には、宝頂山のほかにも石刻が数多く残っているが、ここはその中でもっとも規模が大きく、芸術性が高いという。
大仏湾という、海の「湾」のような馬蹄形をした地形の谷に階段を下りていく。まず、獅子のような岩壁に彫られた石像が入り口付近にあり、その後次々と石像、石刻が現れてくる。


宝頂山だけでも約1万体ほどの石像、石刻があり、7世紀ごろからつくられ始めて、唐末期から南宋時代(9~13世紀ごろ)のものが主流という。石刻がある崖の距離は約500㍍に及ぶという。
遊歩道を行ったり来たりしながら、奥に進んでいく。おもしろい動物の像がある。ガイドは「虎です。ちょっとおかしいですけど」という。その横には「羅漢像」が並んでいる。


たぶん、オッと思うのは、羅漢像の隣に立つ、3体の立像が並んだ「華厳三聖」だろうか。


向かって左から普賢、盧遮那、文殊の各菩薩といい、大きさは約7㍍。普賢菩薩の手に載っている塔は軽く500㌔を超えるそうだ。
造られてから800年ぐらい立っているという。よく手が折れないものだと感心する。


近くにある「六道輪廻図」は、輪廻転生を天上界から地獄まで6つに分けて表現している。全体を抱えているようなのが閻魔様らしい。
上が天道で下が人道、畜生道、餓鬼道、阿修羅道、地獄道がある。その中に3つの輪があるが一番内側が人間の一生を表しているのだというから、人の一生の中にも6道があるのだろうか。

六道輪廻図

フィルム時代の写真撮影に失敗したのが残念だが、金ぱくで覆われた千手観音像も見ものの1つ。しばらく修復作業で見られなかったそうだが、2015年に終わったという。
無数に彫られた手(腕)は実際には1007本あるというので、時間があれば数えてみてはいかがだろう。

手で削り出した巨大な釈迦涅槃像

たぶんハイライトは、釈迦涅槃(ねはん)像。像の手前にある、地面から湧き出てきているように作られた弟子たちの石像が大人の背丈ぐらいありそうだから、像の大きさが分かってもらえるかも。
長さ(身長)は約31㍍。これを岩壁から削り出す忍耐と執念はどこからくるのだろうか。


仏西方極楽浄土の様子をみせる「観無量寿仏経変相」や閻魔大王を中心にした「地獄変相」など大きな石像、石刻が集まったところも人気があるそうだ。

感無量寿仏教変相

多くの石刻には、彩色がしてあったようだ。いまはだいぶ色が落ちてしまっているが、完成時は華やかだったと想像できる。

感無量寿仏教変相

仏教遺跡といわれるだけあって、大仏湾全体にわたって、仏の教えを描いている。大がかりなものではなく、小さな石刻が集まったところが多く、それぞれテーマがあるようだ。

ブッダの一生、仏を守護する虎などの動物、牛の一生でたとえる人間の一生、親への恩を表す話、庶民の生活ぶりなどなど、さまざまな題材の石刻が岩壁に浮き彫りされている。


多くが仏教説話、教義を基にして日常生活などになぞらえ、文字がわからなくても見ることでわかりやすく教えているという。


男性は左手、女性は右手を上げ、目をつぶって前に歩いて壁にある突起に触れると「幸運が舞い込む」という占いをできる石刻もあったりして、その時代の人にとっては仏教を覚えるテーマパークのような存在だったのかもしれない。

19世紀ごろまで作られ続けていたそうだが、製作途中で止めたものもたくさんあり、四角く切り出されただけの岩も数多く残っている。中間付近にある売店に日本語のパンフレットがあるので、手に入れておくと少しは便利だ。


今回は行かなかったが、宝頂山同様に石刻が集中している北山や南山もこの「大足県」にある。大足全体では50か所近くに約5万体の石刻があるという。この地が仏教にとってどういう土地だったのかはわからないが、彫りやすい石が多かったのだろうか。


重慶への帰りも高速を乗り継いで戻る途中、にわか雨があった。重慶都心部に入る直前「ちょっと車を洗います」とガソリンスタンドのような洗車場へ。「重慶では雨が降った後に泥がついたままの車で市街地に入ると、罰金を取られるのです。汚れを持ち込んではいけないのです」とガイドが教えてくれた。

1999年登録

  1. この記事へのコメントはありません。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。