古代都市テオティワカン(メキシコ)
古代都市の謎を解くカギを握る神殿
テオティワカンというと、大ピラミッドが有名だが、20万平方㍍という遺跡の敷地内には、たくさんの遺構が点在している。一番印象に残ったのは「ケツァルコアトルの神殿」だった。
南側にある一番大きな駐車場から遺跡に入ったときに、まず見たのがこの神殿。「死者の道」を横切って進むと、小さなピラミッドがある。小さいといっても、高さ22㍍。ほぼ当時のままという保存状態のいいという。
「ケツァルコアトル」(Quetzalcóatl)とは、ケツァルは緑の羽根の鳥、コアトルは蛇の意で、羽毛がある蛇。農業神、創造神といわれる。神殿の壁には、たくさんのケツァルコアトルの顔の像がはめ込まれている。
口を開けて牙をのぞかせている姿は、蛇というよりも、ピューマやライオンのようにみえるのだが・・・。
その神と対になるように「トラロック」という雨の神がはめ込まれている。ケツァルコアトルと同じぐらいの数なので、この神殿は2つの神を祀っているのだろう。
どちらかというと、トラロックの方がそのユーモラスな姿のインパクトが強く、主役といってもおかしくない。
ともにテオティワカンの時代から崇拝され、今の名前はアステカの時代の名前だが、マヤ文明ではそれぞれククルカン、チャックという名前で呼ばれている。この2神についてはそれぞれ神話があるという。
雨の神にいけにえを捧げる
さて、トラロック。目が4つあるような感じだが、上の2つは髪飾りという。神様なのでどんな姿をしていてもいいのだが、映画などでみるロボットに似ている。
アステカ人は干ばつを避けるため、雨をコントロールするトラロックに生け贄をささげていたそう。神殿を見ると、なぜか魚やホタテ貝、波のような彫刻がある。海からは遠いはずなのでが、水を表すのだろうか。
太陽のピラミッドの向きはプレアデス星団(スバル)や金星に関係しているなどという、テオティワカン成立にあたって宇宙規模の説があるらしい。
トラロックは宇宙人のロボットか? などと考えているうちに、死者の道は滑走路に見えてきて、頭の中では壮大なイメージでいっぱいになってきた。
近年、この神殿から大量の人骨が発見されたという。生け贄をささげていたという話は本当らしい。
そういえば、4㌔ほどある「死者の道」のちょうど中間点あたりにあるので、ここが本来は街の中心部だったのかもしれない。この神殿が、なぞ解明のカギを握っているのかもしれない。
聖獣ケツァルパパトル
月のピラミッドの隣には「ケツァルパパトルの宮殿」「ジャガーの宮殿」の遺跡がある。それらの神殿には、彩色された壁画や彫刻が残っている。
またでてきた舌を嚙みそうな「ケツァル」と蝶の意の「パパトル」で、鳥の頭をした蝶。聖獣だという。
アステカの人たちは羽のあるものが好きだったようだ。柱にその聖獣を見つけたが、目に黒曜石がはめ込まれていた。赤い彩色の壁画も多く「血」の印象が残る。
ジャガー宮殿にはかなり鮮明に色が彩色された壁画や彫刻がたくさん残っている。ピューマや鳥などが描かれているというが、かなりデフォルメされているので、ほとんど何が何だかよく分からなかったのだが・・・。
色鮮やかなアステカ神話の壁画
アステカ神話はあまりなじみがないのが弱点だった。もっと下調べをしていけばよかったと、ちょっと後悔した。行く方は少し調べていく方がより楽しめるだろう。
土産物を売る人たちがいる「死者の道」の両側には、そのほかにも数多くの遺構が残っている。ナイフややじり材料だったという黒曜石が置いてある倉や神殿、住居の跡などが延々と続く。
彩色された壁や、奇妙な彫刻、整備された階段、儀式を行っていたであろう祭壇など、当時のこの街の技術力や役割を表しているようだ。
残念ながら、その多くは廃虚から復元するときにコンクリートのような現代の材料を使っているのが目につくので、外見の古さという点ではあまり実感できないところもある。
それでも、ピラミッドを中心に神殿の彫刻や壁画などを薄い空気を吸いながらゆっくり歩いて見ていると、2000年前後も前の造形に感心させられることは間違いない。
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