グヌン・ムル国立公園(マレーシア)


波のようにくねったひだのように成長しているのもある。自然というのは、不思議な形を生み出すものだ。石灰岩と水、風がつくり出した芸術品といった感じだ。

数百万のコウモリが飛び立つ姿

洞くつを出てからも見ものがある。ラング・ケイブを見た後、ディア・ケイブの入り口付近を見られる広場に行く。長いす風の腰掛もあり、子ども連れの地元の人や、観光客が集まってきていた。
「日没直前に始まります」とガイド。しばらく洞窟の入り口に目を向けていると、崖にある上部からコウモリの群れが竜巻のように渦を巻きながら、空へ飛び立ち始める。
1グループ数千匹はいるだろうか。1つ飛び立つと、次のグループが…と、割と規則正しい間隔をあけ、ジャングルへ飛び立っていく。残念ながら薄暗くて当時のカメラでは収められていなかった。
その形は龍のように見えることから「ドラゴン・フライ」といわれるそう。目的は食事。洞窟内のコウモリすべてが出かける訳ではないというが、1日1匹あたり5グラムの虫を食べるコウモリが500万匹だったら25トン! そんなに虫がいるジャングルの豊かさのほうに感心する。

ボートで川をさかのぼる

その日は、ジャングルの中にある「ロイヤル・ムル・リゾート(現ムル・マリオット・リゾート&スパ)」というホテルに泊まった。客室も廊下も高床式になっている。

ホテルはメリナウ川に面している。道もあまりないので、このあたりでは船が重要な移動手段になる。
夜、野生動物を船で探しに行くツアーがあったので出かけてみた。船外機付きの細長いボートで行き、川岸に姿を見せるはずのさまざまな動物を探し回る。時折、森の木や草が動くので、ボートを止めてじっと待ったが、残念ながら動物には会えなかった。
代わりに、森の豊かさは十分実感する。ボートの光に誘われて、周りは小さな虫だらけ。幸い、刺されはしなかったが、目、鼻、口に飛び込んでくる。
翌朝、同じボートでメリナウ川を遡る。目指すのは「クリアウォーター・ケイブ(Clearwater Cave)」と「ウインド・ケイブ(Wind Cave)」。名前からして爽やかそうだ。

川の両岸はもちろんジャングル。水鳥が飛びまわる。サルもいるそうだが、出てこなかった。途中のペナン族の村で一服して、さらに遡る。

きれいな水が生む景色

クリアウォーター・ケイブは、その通り、きれいな水が洞窟内を流れている。船着場から急坂を上り、入り口につく。
「レディ・ケイブ(Lady Cave)」と「リバー・ケイブ(River Cave)」の2つに分かれている。中ではつながっているという。
レディ・ケイブには、壁に映る影が女性のようにみえる石筍がある。ここから洞窟の名前がついたそう。確かに、石筍が映す影は角度によって女性像、しかもマリア像のようにみえる。


他にも鍾乳石のきれいな洞窟で、まだ新しいのか、石はそう大きくはないが、優雅さがあるように感じる。
リバー・ケイブのほうは、文字通り洞内を川が流れている。川の浅いところに入ってみた。水はそう冷たくはないが、流れが急。洞窟の奥、暗闇に向かって流れているので、足を取られるとどうなるか。少し不気味だ。


洞窟内では、遊歩道が鍾乳石などのすき間をぬうようにしてあり、まっすぐ立って歩けないようなところも多い。その分、間近に見ることもできるのが、ここの魅力かもしれない。


その地下水が外の世界にでるのは、切り立ったがけの下。湧き出し口には、きれいな水をたたえた池がある。泳ぐ人がいるため、水がにごってしまい、せっかくの「クリアウオーター」が台無しになったこともあって遊泳自粛中という。
そのほとりがテラスのようになっており、見学を終えてお茶を飲みながら一服。次のウインド・ケイブに行くには、また急坂を上ってがけの上に出なければならない。

風がつくった地下世界

ウインド・ケイブは文字通り、風が通る洞窟。風はそれほど感じなかったけれども、鍾乳石が風で侵食されて丸みを帯びているという。

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