エローラの石窟群(インド)
オーランガバード~エローラ~ジャイナ教窟~ヒンドゥー教窟~仏教窟
ただただ岩山を削り、巨大な寺院を造った。しかも、3つの宗教が仲良く混在している。そんな場所がインドにある。2016年、行ってみた。
デカン高原の中心都市、オーランガバード(Aurangabad、アウランガバード)から車で1時間ほど。駐車場から入り口に向かう。目の前に岩壁が露出している。その岩を掘り進んで作られた寺院は「エローラ石窟群」(Ellora caves)と呼ばれる。たくさんの「窟」には、番号が振られている。
岩壁は南北に約2・5㌔続いているそうで、南側の第1窟~12窟が仏教、13窟~29窟がヒンドゥー教、少し離れた北側にインド独自ともいわれるジャイナ教の第30窟~34窟がある。
胸が真っ黒になった女性
「まず遠くから行きましょう」と、場内のバスに乗ってジャイナ教窟の第30~34窟に向かった。ジャイナ⇒ヒンドゥー⇒仏教と見ていくのが一般的な順路なのだという。
岩から掘り出されたという大きめの寺院、第32窟から始めた。入口を入ると、まず大きな象が出迎えてくれる。
「ジャイナ教の寺院は彫刻が素晴らしいといわれます」とガイド。確かに、細かな彫刻が入口の壁から始まっている。
中には入ると、壁面には開祖マハヴィーラ、ヤクシュ、ヤクシニーという男女の神、ゴーマテシュワラら修行僧らが彫られている。
ジャイナ教の詳細は他に譲るが、禁欲主義で無所有をむねとし、衣類も身につけない派もあることでも知られているそう。開祖は仏陀と同じ時代に生きた人だという。
ヤクシニー女神の胸はみんながさわるのだろう、真っ黒になっていた。確かに触って見たくなるかもしれない。
ちなみにヤクシュ神は象、ヤクシニー神はライオンに乗っている。ともにヒンドゥーの最高神シヴァ神に仕え、後述するカイラーサ山に住む。女性の方は日本では「夜叉」と呼ばれるという。
2階では彫刻が施された柱が目を引く。このジャイナ教窟は9世紀ごろが最盛期だったという。エローラの3宗教の中では一番新しい。
隣にある第33窟も彫刻類がきれいに残っている。これらも手で彫り出されたものだ。こちらは、たぶん聖人たちと見える像が多くあり、彩色が残っているものもある。
また、壁画も天井や壁に一部が残っている。先に見た同じデカン高原にあるアジャンター石窟寺院で働いていた人たちが、6世紀ごろにこちらに移ってきたという。アジャンターで壁画を描いた職人たちが腕を振るったのかもしれない。
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