マテーラ(イタリア)

アルベロベッロ~マテーラ

岩山に洞窟を掘って暮らしていた人たちがいる。しかも、街をつくっていたという。洞窟住居が集まっている「マテーラ(Matera)」に2017年、行ってみた。

とんがり屋根の不思議な家が集まるアルベロベッロから、ツアーバスで今度は「サッシ(Sassi)」と呼ばれる洞窟住居の街へ向かった。南イタリアには、世界遺産になるような、おもしろい家が多いようだ。

着いたのは普通の街並み。「昼食を先に取りましょう」とガイド。案内されたレストランが、岩をくりぬいたのか、その状態であったのか、広い洞窟の中だった。店の奥に続く階段があったので下りてみたら、洞窟をくりぬいたような小さな部屋があった。これがサッシなのだろうか。サッシとは「石・岩」を意味するサッソ(Sasso)の複数形という。窓枠のことではない。

入口に石を積み上げて「家」にみえる洞窟住居

昼食後、レストランから見えるマテーラの街を見た。岩の斜面にへばりつくように住宅が密集している。ただ、それらの多くが洞窟住居とは思わなかった。洞窟住居と言えば、トルコのカッパドキアで見たように、岩に穴が開いている感じだと思った。

街並みを歩く。旧市街に入っているのだが、普通に古い教会があり、数階建ての建物があり、しっかりした道路があり、広場があり…。

ひときわ大きな建物が見えてきた。13世紀にロマネスク様式で建てられた「ドゥオモ」だった。大きなバラ窓がきれいだ。

ドゥオモのあたりにはサッシらしいものは見当たらないのだが、裏手というか、少し進んで先ほど見た家が密集したところに入っていくと、様相が一変する。岩にくっついて家が建っている。

「家の中に入ると、洞窟になっています」とガイドがいうように、玄関などは普通の家に見えるのだが、奥は岩の中にあるようだ。

マテーラに人が住みだしたのは紀元前8世紀ごろという。8世紀以降、迫害されたキリスト教徒(ギリシャ正教)がやってきて、軟らかくて細工しやすい凝灰岩の岩山にあった天然の洞窟や、自分たちで掘って造った洞窟に住み着いたのがサッシの始まりという。ガイドは「修道士たちはカッパドキアの洞窟住居を見習ったと言われています。家を建てるより掘る方が合理的でした」と説明した。

サッシの特徴は、洞窟を掘った時に切り出した凝灰岩を積んで、建物の入口にしているので、一見すると普通の建物に見える。

ガイドの話やパンフレットによると、その後修道士らに代わって農民が住み始めた。そのうちに裕福なものは洞窟住居を出て丘に普通の家を建てて新市街となり、19世紀末には荒廃したため、残った住民が強制退去させられたという。世界遺産登録もあって近年、価値が見直され、サッシの街は復活した。

街の西側が新市街、ドゥオモを中心とした東側が旧市街で、サッシの街としては旧市街の北部の「サッソ・バリサーノ(Sasso Barisano)」と南部の「サッソ・カヴェオーソ(Sasso Caveoso)」が残っている。主に観光対象になっているのはサッソ・カヴェオーソ地区になる。谷を挟んだ岩山の斜面には穴がたくさん開いており、こうした洞窟からサッシの街ができたのだろう。

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