クスコ旧市街(ペルー)
路地を歩きながら向かうと、ガイドがいったん停止し「いつもはこの先にあるんですが、手前側の石組みを修理中で通れなくなっていて、ちょっと遠回りします」。途中までが多い日だ。
やっとめぐり合った石は、組み合わされた周囲の石の形にあわせて12角形に加工されていた。
接触面を丁寧に仕上げてあるので、ピタリとはまっている。これだけの技術があるなら、周囲の石の方(特に上に乗せる石)を削ってもよさそうだとは思ったが、何かこの石を残す理由があったのだろうか。
「14角の石も見つかっています」と、近くでガイドが指さした石組みには、確かに14角形の石がはめ込まれていた。探せばもっとでてくるかもしれない。
インカの都は地震にたびたび襲われており、先に見たラ・コンパーニア・デ・ヘスス教会も一度崩壊しているが、現在まで残っているインカの石組みはまず崩れないという。街を歩いていると突然石組みの遺跡に出くわす。
当時のものかどうかは分からないが、民家もインカの石組みを利用しているようにもみえる。
ただ積むのではなく、削ってかみ合わせたり、接触面の角度を変えたりして、地震対策もしていたというから、インカの石組みは奥が深そうだ。
インカの中心に立つ神殿
古い街並みの通りを通って、次に向かったのが「サント・ドミンゴ教会(Iglesia De Santo Domingo)」。ここは「コリカンチャ(Qorikancha)」という、インカ最大の太陽神殿があった場所に建てられた。
「クスコ」というのはインカの言葉ケチュア語で「ヘソ」を意味し、世界の中心と考えられていた。太陽信仰のインカにとっては、もっとも聖なる場所が太陽神殿になる。
いまは神殿の大部分は破壊されて、その上に教会が建てられたが、面影をとどめている場所もある。
教会に入る。内部は庭を囲むように四角い廻廊で結ばれている。壁面に絵が描かれていたが、絵単体での撮影は禁止だった。
その廻廊の1面に、インカの石組みで囲まれた、台形の入り口がある。太陽神殿(だったところ)への入り口だ。
中に入ると、丁寧に長方形に削られ、磨かれた石が整然と積み上げられた壁がある。ところどころに穴がうがたれている。かつてはこの神殿中が黄金で飾られていたという。
教会のガイドによると「コリは黄金、カンチャは場所と言う意味です」といい、ここにあった黄金はスペイン人が全部はぎ取った。「現在の価値で約60兆円分といわれています」というから驚きの額だ。
クスコの太陽神殿だけでその価値だったら、インカ全土から黄金をほとんど持ち去った16世紀当時のスペインの財政力は相当だったと想像がつく。とても返還できる額ではなさそうだ。
外側に回った。重かった体も少しずつ動くようになっている。頭痛などの高山病の症状もまだ出ていない。体が順応してきたと思いたい。
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