エレファンタ石窟群(インド)

石窟は四角く造られている。ホールの右寄りに中央神殿がある。まずは壁面を見るために、時計回りに回った。

 

左のテラスの左柱には「ラヴァナ・シェイキング・カイラーサ」の彫刻。シヴァ神の住むカイラーサ山でのラヴァナという悪魔との戦いを表し、板のようなカイラーサ山の下には持ち上げて山ごと持っていこうとするラヴァナがいて、上に乗ったシヴァ神が押さえている。

その向かい側の右柱には「ゲームをするシヴァ」の像。「すごろくのようなもので、サイコロでゲームをしていて、負けたパールヴァティーが逃げていく様子です」と、少しコミカルな彫刻になっている。

破壊と創造の神は何にでもなれる

入口の反対側、奥の壁面には3つの場面が並んで描かれているのが、第1窟のハイライトでもある。

左側には、左胸にだけ乳房があるシヴァ神。「ナーリ(女性)・ナティ(男性)・シュワラといいます。ブラフマーが人間をつくるのをやめたときに、人口が増えなくなって女性をつくらなかった間違いに気づいて女性をつくった。シヴァはその半分が女性に変化した」(ガイド)という神話があるらしい。

ナーリ・ナティ・シュワラ

銃弾にやられていないきれいな像が中央にある。「マヘッシュ・ムルティ」というそうで、3つの顔を持つシヴァ神。「右は女性的な顔で平和、左は破壊者、中央は穏やかな顔で調和を表しています」とガイドは説明した。

マヘッシュ・ムルティ

奥の右側には、ガンジス(ガンガー)の物語。「ガンジスはシヴァの髪の毛になって頭に住んでいます。強い人を表しています」とガイド。シヴァ神の右に女性として描かれている。

左上にブラフマー神、右上にヴィシェヌ神が描かれ「左下にシヴァの妻のパールヴァティーが怒った表情なのは、別の女性と一緒だから」と、ガイドは笑った。

 

シヴァの喜怒哀楽を描くシヴァ・ファースト

入口から見て右のテラスに進む。左柱には「カルナーヤ・スンダラ・ムルティ」という、シヴァ神とパールヴァティー神の結婚式の様子が描かれている。「手をつないで、火の周りを7回回ります」という結婚式だそうだ。

右柱には「アンダカスラ・ヴァーダ・ムルティ」という「怒れるシヴァ神」。それまでどちらかというと穏健なシヴァ神だったが「悪魔との戦争で剣と皿を持ているのは、退治した悪魔の血を落とさないためです。落とすと悪魔がまた出てくる」という。

額に第3の目がある。「これが開くとすべてを焼き尽くしてしまいます。会社員が『部長が第3の目を開けた』というと、かなり怒っているということです」と教えてくれた。

このテラスの前に中央神殿「シヴァ神殿」がある。中にはシヴァ神の象徴の「リンガ」が置かれている。ヒンドゥ教ではリンガはエネルギーの源。「自分や家族に重大な問題があると中に入って祈っていました。昔は神殿の中に女性は入れなかった」という。今は四方に出入り口があって、自由に入れる。

中央祠堂のリンガ

とにかく「シヴァ・ファースト」の石窟寺院。喜怒哀楽、さまざまなシヴァ神を見せてくれる。

シヴァ神を引き立たせる細かい彫刻がたくさんあったはずなのだが、射撃の的にされて失われてしまったところも多いのが惜しまれる。大航海時代のポルトガル人の暴挙がなければ、もっと美しかったはずなのだが…。

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