アジャンターの石窟群(インド)


ストゥーパの前ではお坊さんが礼拝をしていた。単なる遺跡ではなく、今も現役の寺院でもあるのだろう。

古代の画家が使ったパレット

よく見ると、両側の柱は八角形のものが多い。壁面や柱には絵が描かれている。傷んではいるが開窟されてから2000年以上たっているとは思えない。


床には奇妙なくぼみが並んでいる。「当時のパレットだったと考えられています」とガイド。柱に発見者のジョン・スミスがサインを残しているというが、よくわからなかった。

釈迦の物語が生き生きと描かれる

ここからしばらく未完成窟がつづいた後、第16窟、17窟でまた素晴らしい壁画や天井に出合う。


第16窟では天井を見上げたい。梁、といっても掘り出されたもので取り付けられたものではないが、梁を支えているように彫られているのは「昔の労働者」(ガイド)だという。


壁画は仏教説話。奥には「リラックスした姿の」(ガイド)仏像がある。椅子に座って、足を開いている。日本ではあまり見かけない。足元の穴は賽銭入れだという

足を開いて座る釈迦

第17窟の壁画は保存状態がいい。まず、ここでも入り口の天井を見上げよう。植物と思われる絵がきれいに残っている。


窟内には釈迦の物語「ジャータカ」を中心に描かれているそうだ。第1、2窟に比べると少し明かりがあるのだが、奥に進むとやはり暗い。


釈迦が僧になって最初に托鉢に行ったのは自分の家で妻子からだったという絵が印象に残る。このあたりは後期窟になる。

「ジャータカ」釈迦最初の托鉢

チャイティヤで入り口の彫刻がたぶん石窟群の中でも一番きれいだと思われるのが第19窟。中も太い柱が両側に並び、その上にはびっしりと細かな彫刻が施され、アーチ状の天井と相まって完成された感じがする。


「ここは内部の彫刻も一番きれいです」と、中に入るとガイドは天井を差した。天井にはさほど痛んでいない壁画がびっしりと描かれている。


奥のストゥーパには、仏像が彫られている。「大乗仏教と小乗仏教(上座部仏教)が合わさったストゥーパと言われます」という。

巨大な涅槃像で仏陀の生涯を総まとめ

さて、最後のハイライト窟は第26窟になる。そこまで未完成窟をチラッと見ながらたどり着くと、入り口正面には仏像彫刻で飾られた壁面。中に入ると、左手に巨大な「涅槃仏」は彫られている。


7㍍あり、インドでも最大級のものだという。仏陀の上には天界、下には悲しむ弟子たちが描かれているクシナガルでの仏陀入滅のシーン。精緻ではないが、味がある表情をしている。
奥に向かう回廊にはブッダガヤで悟りを開いたところなどの彫刻もあり、仏陀の総まとめのような印象だ。

悟りを開いたブッダ

最奥にはストゥーパが鎮座し、またも足を開いて座る仏陀が彫られている。


第26窟を出て、歩いて来た方向を見る。こんな山の中、谷に落ちる断崖の中腹にどうして大変な労力と時間をかけて石窟寺院を500年以上かけて刻んでいった。この場所が仏教的に何か特別な場所だったのだろうか。


帰国してしばらくしてから、テレビで宇宙関連のおもしろい番組があった。6000万年前、恐竜を絶滅させたのは巨大隕石説が有力だが、その影響でデカン高原の巨大火山が噴火し、追い打ちをかけたのだという。
アジャンターの岩はその時代の火山岩でできている。恐竜が絶滅して哺乳類が繁栄し、人類が誕生した。ここには壮大な物語がありそうだ。

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