サガルマータ国立公園(ネパール)

カトマンズ~トリブヴァン空港

世界最高峰を見たいと思った。ネパール名サガルマータ、チベット名チョモランマ、英語名エベレスト、8848メートル。

母校の先輩、三浦雄一郎氏が2013年に世界最高齢80歳で登頂に成功されたが、残念ながらそのような強い気力も体力も持ち合わせていない。時間も予算も少ないならどうすればいいか探していたら、ネパールの首都カトマンズから小型飛行機でサガルマータを見る「マウンテンフライト」を見つけた。ホテル送迎付き180ドルを予約し、2011年10月、行ってみた。

ちなみに、トレッキングや本格登山とすれば、費用や時間は2、3ケタ違うだろう。

2週間前に墜落したフライト

出発直前の9月25日、予約した航空会社のマウンテンフライト便が墜落事故を起こし、乗員・乗客19人全員が亡くなった。予約代理店にメールで問い合わせたら「機体の問題ではなく、悪天候の視界不良が原因。来られるころはちゃんと乾期になって晴れるといいですね。ちょっと雨期が長引いているんで」と返答がきた。心配ないということなのだろう。

事故から約2週間後の朝5時半、ホテルを出発する。夜明け前の空には満天の星。天気は良くなりそうだ。

トリブヴァン空港国内線でチェックインに並んでいたら、通行証を胸につけた係員が私のeチケットを持っていって手続きしてくれた。

「ありがとう」というと「チップを」という。どうやら正式な航空会社の係員ではなかったらしい。勝手に手続する人がいるようだ。20ルピー(約20円)渡すと「もっと」というから断ったが。

7時に飛行機へ運ばれた。満席の16人で、パイロット2人、客室乗務員1人。「19人…墜落したのと同型機だな」と一瞬、不安もよぎったが、ベルトを締めればもう逃げられない。

飛び立って、すぐにヒマラヤの山々が目に飛び込んでくる。真っ白なランタン山群が続く。ここから東に向かって飛び、サガルマータの上空で折り返してくる。

乗客は全員窓側で、行きは左側、帰りは右側の席からヒマラヤ山脈を見られる。山名の入ったイラスト地図を見ながら雪をかぶった山の頂をながめ、特徴ある山が見えると客室乗務員が教えてくれる。

大きなプロペラ音で聞き取りにくく、サガルマータを探して先の方に目と心を奪われているので、なんとなく上の空。写真だけは撮っていたが、何を写しているかよくわかっていない。

目の前にそびえる世界最高峰の峰々

テレビや写真などで記憶にある山の形がうっすらと目の端に見え始めたころ、右側の席から1人ずつ、順番にコックピットに呼ばれる。

自分の番になった。「左がエベレスト、右がローツェ」とパイロットが短く言う。15秒ぐらいだったろうか、目で見て、カメラを向けた。まだ遠方に、それはあった。

一巡すると、また最初の人から呼ばれる。機内もサガルマータを見られた興奮もあって、騒々しくなってくる。2度目のコックピットからの景色、これは近かった。

  1. この記事へのコメントはありません。