マラケシュ旧市街(モロッコ)

けっこうな脅し文句ではあるが、スークの中に入らないことにはこの広場のことがわからないだろうと、ちょっと緊張しながら広場に出た。

この広場は昼と夜ではまったく様相が変わるという。昼間は大道芸人が広場のいたるところで自分の芸を見せて、観客からチップをもらっている。

日が傾いてくると、テントや屋台が店を開き始め、主に飲食店が広場いっぱいに広がるというので、先に大道芸を見ておこうと、広場を歩き回った。

「写真を撮るとチップを要求されることがある」というので、なるべく正面からは撮らずにいた。すごい人だかりがあったのでのぞいてみたが、音楽を演奏しながらなにか芸をやっているらしい。人が多すぎてよく見えなかった。

広場全体に大道芸人たちは散らばって、それぞれの芸を披露している。ヘビ使いももちろんいた。コブラを使っていたが、周りに人が来なかったのでまだ「芸」をしていなかったから、何をするのかはわからなかった。

広場の名前は「死者たちの広場」という意味があるそうで、昔は公開処刑などが行われたという。今はそんな暗さはまったくない。

迷路スークに挑戦

広場をひと回りして、スークに挑戦した。

ベン・ヨーセフ・モスクとクッバ・バアディンという2つの建物を見たいと思い、スークの地図をしっかりと見ながら歩き始めた・・・のだが、目印になる最初の建物はわかったが、肝心の通りが見つからない。

スークの道、ちょっと広めの道には名前がついているのだが、その道の名前を探せない。地図を読むのは得意なほうなのだが、のっけからお手上げ。歩いていくうちに分かるかもしれないと思って「スーク・エル・クサビン」という看板のかかった広めの道を入った。

これまでイスラム圏の街で、メディナと呼ばれる旧市街の市場をいろいろ見てきた。ごちゃごちゃしているのは同じだが、なにより、他の市場より一段と活気がある。見ようと思っていた建物よりもこうした雑踏の方が楽しいかもしれないと、奥へ向かった。

騒々しいので、隣の人の声も聞き返さないといけないときもある。何でも売っている。「これが商品か」と思うような雑貨も堂々と並べている。曲がりくねった細い道を行くと小さな広場に出たりする。

地図とにらめっこしても、しょせんはよく分からないので、道に迷わないように分かれ道の建物や店を覚えるようにしたが、分かれ道が多すぎて「本当に帰れなくなるかもしれない」と少し不安になった。

廃墟のようなところもある。行き止まりももちろんある。そうこうしているうちに、日が暮れてくる。街灯は見当たらない。商店の明かりが頼りだ。

ある程度まで進んで、目印を忘れないうちに引き返してきた。後で気づいたのだが、地図で大きめの通りになっていても実際の通りはかなり狭いらしい。大きめの通りばかり探したのが間違いだったようだ。

ジャマ・エル・フナ広場に戻ると、もうほとんど日が暮れていた。食べ物屋が営業を始め、日本人と見ると日本語のメニュー(といっても紙1枚だが)を見せながら「おいしいよ」とか「こんにちは」と客引きに来る。

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