アイト・ベン・ハッドゥの集落(モロッコ)


村の路地をさらに登っていく。家の間から下をのぞけるようになってくると、やはりかなり大きな村だというのが分かる。軒を連ねる家々がびっしりと岩山の斜面に張り付いている感じだ。けっこうな斜面で、ついて来る子供たちが軽く登っていくのがうらやましい。


「ベルベル人の家は、壁の模様に特徴があり、幾何学模様になっています」とガイド。1軒1軒、さまざまな模様が壁に刻まれている。デザイン性も高い。

窓が小さい理由は?

窓も幾何学模様の格子がはめ込まれており、色ガラスを入れてあるところもあり、たぶん家の中からだときれいなのだろうと想像できる。


「窓が小さいのは、日差しを避けるためと、奥さんに逃げられないためだそうです」とガイド。どこかで似たような話を聞いたことがある。


岩山の頂上に出る。倉庫のような建物があるが、これは「観光用に最近作られたものです」という。頂上から段々畑のように立ち並ぶ建物を眼下に見られる。


目を遠くにやると、雪解けが始まっている春のオート・アトラスが、茶色の大地の向こうに見える。絶景だ。ついてきた子供たちは、そこらへんを走り回って遊んでいて、観光客相手にはもうあきたようだ。

映画のロケ地としても知られる

保存状態のいい村、こうした景色なので、数多くの映画の舞台になったのだろう。道の途中に、ここで撮影された映画のリストが掲げられていた。「アラビアのロレンス」「ソドムとゴモラ」「ナイルの宝石」から「ハムナプトラ2」や「プリンス・オブ・ペルシャ」などもある。


中でも、かなり大規模なロケをしたのが「グラディエーター」。「あそこの広場に闘技場のセットを作って撮影しました」と、ガイドが指さした。
帰国して映画を見たが、アイト・ベン・ハッドゥの景色だった。映画の場面を覚えていけば、撮影場所がわかるはずなので、行く前に見ておく方が楽しめそうだ。


村は500年ほど前につくられたという。ベルベル人の中でも、ハッドゥ族の力は強かったというので、こうした難攻不落の「クサル」が必要だったのかもしれない。
岩山を下り、グラディエーターのロケ地の広場の横を通ると、立派な門がある。


帰路は橋を渡らずに、マレ川を直接わたる。乾季は干上がるが、行った時は水が流れていた。飛び石代わりの土嚢を伝って対岸へ。ほとんど土だけで出来ている村だが、ここから見上げても美しいと感じる。

 1987年登録

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