カルタジローネのスカーラ(イタリア)
パレルモ~ピアッツァ・アルメリーナ~カルタジローネ
階段が世界遺産になっている!? そんな街がイタリアのシチリア島にある。2017年、行ってみた。
シチリア州の州都パレルモから山間のピアッツァ・アルメリーナを経由して南下、カルタジローネ(Caltagirone)に向かった。
この街は「陶器の街」として知られているという。ツアーバスを降りて「これに乗りましょう」とガイド。ミニトレインが待機していた。
これも観光客を歓迎するイベントなのだろう。よく見ると、線路はなく、車輪はタイヤ。「トレインバスといいます。街はイスラム統治のころに迷路のように造られて、観光バスが入れません」。車を改造した機関車? が引く客車に乗り込んで「階段」のある旧市街に向かった。
陶器、タイルで飾られた街中
陶器の街と言われるだけのことはある。車窓から旧市街に向かうローマ通りの道路わきの壁を見ると、陶器、タイルがはめ込まれて、壁にアクセントをつけている。
カルタジローネでは、紀元前10世紀ごろから既に陶器の生産が行われたという。近くで良質の粘土がとれ、クレタ島からロクロが伝わったそうだ。
街の名前はアラビア語の「壺の丘」が語源と言われている。9世紀にシチリア島がイスラム勢力の支配を受けた際に、カルタジローネにも城砦が築かれたという。既に壺などを生産していたのだろう。
陶器の歴史を展示している州立陶器博物館の前を通ったが、外壁がきれいな陶器で飾られていた。
18世紀に陶器生産の最盛期を迎えた。主にクリスマスの人形飾り「プレゼビオ」や彩色タイルが有名。製法の詳細は省くが、日本でも知られている「マヨルカ(マジョルカ)焼き」やテラコッタの産地だそうだ。
「サン・ジュリアーノ教会」の前でトレインバスを降りた。教会のクーポラは緑色と水色の中間のような微妙な色合いが美しい。「マヨルカ焼きの陶器でできています」という。曇っていて残念だったが、日光が当たると輝いて見えるだろう。
142段の階段につけられたものは?
古い建物が取り囲む市庁舎前広場。1876年に建てられた市庁舎が威容を見せている。
広場の一角、一見見落としてしまいそうなところに「階段(スカーラ La Scala)」の一番下がある。
下から見上げると、スカーラ1段1段にタイルがはめ込まれている。よく見ると、1段1段、全部違う。これが142段ある。
このスカーラは、17世紀に街の中心だった高台(階段の上)にあった「サンタ・マリア・デル・モンテ教会」と、下のサン・ジュリアーノ地区を結ぶために造られた。スカーラには名前もついていて「Scala di Santa Maria Del Monte」という。
「タイルが張られ始めたのは50年ほど前だといいます」とガイド。比較的新しい出来事らしいが、張られているタイル自体は古い時代のものも多いという。
かつて街中はタイルを使った建物であふれていたそうだが、改築などの際に使わなくなって一時すたれていたという。そのタイルが「街の財産」と見直され、街の主要生産品にもなり、そのPRを階段で始めたのだろうか。
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