九寨溝(中国)

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「あの青い水を見てみたい」。四季を通じて水の絶景「九寨溝」をテレビ番組で知り、どうせなら紅葉のときがいい、ということで、2003年10月、行ってみた。

成都から丸1日、12時間ほどかけての移動。途中の江油県にある「李白堂(記念館)」で休憩がてらに見学しながら、夕方に「九塞溝」と書かれた門を通過した。当時、九塞黄龍空港が開港してまだ1カ月もたっておらず、まだツアーには組み込まれていなかった。今は飛行機でビュンとこられる場所になったのだろう。

ホテルに着いたのは夜だったので、周囲の風景は分からなかった。翌朝、ホテルの外で周囲を見ると、山の紅葉はまだ色づき始めたところで、おまけに空はどんより曇っていた。思わず舌打ちしたが、こればかりは自然のことなので仕方がない。
入場ゲートから、環境保護のために導入されている天然ガス車のバスに乗り込んだ。

入場口で写真を撮るので、帰りにでも売るのかと思ったら、入場券に焼き込んでくれた。初っぱなから粋なサービスだ。

バスの中では、チベット族の衣装を身に着けた女性ガイドが説明してくれる。乗ったバスは中国語だったので、一応翻訳しておこう。

「四川省・岷山山脈の懐、全長40キロにわたってY字形に川が流れ、谷間を形成。昔、天女が空から落とした鏡が割れて大小108の海(湖のことだが、池の方がいいかも)になった。谷に9つのチベット族の村(寨)があったことから、九寨溝と名付けられた。パンダのふるさと。映画『英雄~ヒーロー』のロケ地になった…」。というようなことをたぶん聞きながら、上流を目指す。

5つの色に変わる海

最初にバスを降りたのは「五花海」を見下ろすバス停。光の加減で5つの色に変化するという。全景が目に入ったとたん、濃い青色の水が目に飛び込んできた。

バス停から見下ろす五花海

ところが、階段を下りて池に近づくにつれ、色が変化する。水深と、曇り空の弱い光によっていろいろな「青」を作り出すらしい。

池岸に降りた。確かに水に目をやりながら降りていくと、色が変化してくように感じる。池岸で見る五花海は、さらに鮮やかな色彩を増すとともに、水深や見る場所によってさまざまな青を描き出している。しばし見とれた。

よく見ると、青い水の中や水面に突き出るように、大きな木が沈んでいる。その木は水中にアクセントをつくりだしたりして、いい脇役になっている。

その後に知るのだが「五花海」に限らず、九寨溝にある池の中の倒木は腐らずに、表面には白い綿のようなものが付着していく。

水に含まれる石灰華(炭酸カルシウム)で、水をきれいにするとともに、光の反射などによってさまざまな色を演出しているという。

九寨溝は土砂やこの石灰が長い年月をかけて川の水をせき止める堰をつくり、棚田状に海(池)をつくっていったという。川や滝がその海をつなぎ、谷全体の景観を形作っている。

いきなりの「青い海」に、この先は…と、名残惜しみつつ五花海を後にして、歩き始めた。
主に木でつくられた柵道がしっかり整備されており、ガイドの趙さんが下り主体のルートをとってくれたので、2000~3000メートルの標高でも高山病の苦しさは感じない。

飛び跳ねる水玉が真珠のよう

次に現れたのが「珍珠灘」。石灰岩の岩盤の上を透明な水が広範囲に流れている。川幅が広く、水深は浅いので、水底の白っぽい岩盤の凹凸に水が跳ね、それが真珠のように見えることから真珠=珍珠の由来になった。

ここは太陽の光が欲しいところ。たぶん、水しぶきが光を浴びたらキラキラ光るのだろう。

珍珠灘の横を降りると「珍珠灘瀑布」という大きな滝の下にでる。岩盤を流れていた水が落差約20メートルほどを一気に落ちている。

池の印象が強い九寨溝にも大きな滝はいくつかあり、これもその1つ。霧のような水滴が滝つぼ周辺に舞い、マイナスイオンはもちろん、水しぶきもたっぷりと浴びた。

Y字谷は3000メートル超えの高山

九寨溝の谷間は、Yの右が日則溝、左が則査窪溝、真ん中が樹正溝という。五花海、珍珠灘は日則溝の途中にある。それぞれの溝に池や滝が点在している。

標高は樹正溝の入り口(Yの一番下)が約2000メートルで、観光できる最奥は日則溝の行き止まりにある原始林(3030メートル)と、則査窪溝の行き止まり・長海(3103メートル)と高山にある。

高山病の恐ろしさを説明され、途中でスプレー式の簡易酸素ボンベを勧められるままに買ったが、結局使わずには済んだ。喫煙、飲酒を避ける(配られた紙にはやってはいけないことと書いてあった)という注意があったので多少自重し、水分を多く取るという注意は守った。人によって差があるので参考までに。

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