エローラの石窟群(インド)
もちろん、重機はないのでいわばノミと槌の手作業。カイラーサ寺院の敷地全体は幅45㍍、奥行き85㍍ほど。本堂の高さが33㍍なので、岩山を12万立方㍍以上の範囲を掘削したことになる。
しかも、本堂をはじめとする堂や、壁面の数々の彫刻、柱なども同時に彫り出していくわけで、誰が、どんな設計図で、何人の手で進めたのだろうか。
大雑把に掘り下げるだけの部分は誰にでも可能かもしれないが、彫刻類は熟練職人でなければ難しいだろう。カイラーサ寺院だけで、150年かけて5000人が作業したといわれるそうだ。
神々の物語が刻まれた本堂
本堂に上がった。拝殿とナンディ堂に分かれていて渡り廊下のようなものでつながっている。まず拝殿に入った。
柱や壁面には彫刻が施されており、シヴァ神とヴィシェヌ神が主だといい「神たちの物語が描いてあります」とガイド。かなり暗いのではっきりとは見えないのが少し残念。
字を分からない人たちに向けたものだというが、どうやってみたのだろうか。拝殿の奥にはリンガも置かれている。
ナンディ堂には、象の彫刻が1頭、置いてある。ナンディとはシヴァ神の乗り物の象で、みんなが撫でていくのか、背中や頭がすべすべして、黒光りしている。ご利益があるというので、撫でてみた。
本堂を降り、寺院の周りをもう1周してからカイラーサ寺院を出た。ここだけで1時間以上かかった。
宗教の盛衰を映し出す石窟群
先に行ったジャイナ教窟でも少し時間がかかったので、ヒンドゥー教窟は第16窟だけしか見なかった。少し離れた北側には第21窟など彫刻がきれいな窟もあるというので、時間がある方はそちらにも回ってみては。シヴァ、パールヴァティー、ヴィシェヌなどの神々の彫刻が残されているという。
ただ、ヒンドゥー教窟の中で道が整備されているのはカイラーサ寺院の第16窟から仏教窟につながる第13窟まで。先に見たジャイナ教窟と仏教窟は道が整備されている。そのほかのヒンドゥー教窟は山道やう回路を使う必要があるということなので、足元と時間に注意を。
エローラに共存していたのは3つの宗教。最後に見たのが仏教窟だが、この地で最初に石窟寺院として造られた。アジャンターから移ってきた職人が6世紀ぐらいから造り始めたとされている。
仏教の衰退によってヒンドゥー教窟、ジャイナ教窟と移り変わっていく。宗教にもはやりすたりがあるということだが、壊したり、造り変えたりしない宗教・思想に寛大だった、当時のこの地域の人々の様子がうかがえる。
一番遠い第1窟までさかのぼっていくことにした。第13窟まではヒンドゥー教窟で、第12窟~第1窟が仏教窟になる。「ここが一番きれいです。12のうち11は僧院で、ここだけ礼拝堂になっています」とガイドに言われて第10窟に入ってみた。
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