エピダウロス遺跡(ギリシャ)
アテネ~コリントス運河~エピダウロス
2000年以上前にできた劇場が、今も現役で人々を楽しませている。医療に音楽を用いたという医神を祀る場所に2019年、行ってみた。
アテネから古代ギリシャの遺跡などを訪れる1泊2日の英語・スペイン語のクラシカルツアーに参加した。本土とペロポネソス半島を結ぶ細い陸を貫くコリントス運河を見てから橋を渡り、半島側に入る。
毎年フェスティバルでにぎわう古代の劇場
アテネを出て3時間ほどでエピダウロス(Epidavros)に着く。遺跡に入って最初に目にするのが、石造りの巨大な「古代劇場」だ。
紀元前4世紀に高名なブロンズ像作家を父に持つ、父と同名のポリクレイトス(Polyklitos、ポリュクレイトス)の設計で造られた。地面にはオルケストラという、石で円形に囲んだ広いステージがあり、客席は当初34段、その後紀元前2世紀に21段追加され、1万2300人ほどを収容できるという。
原形を残しながら修復を行い、現在も現役。夏に開かれる「アテネ・エピダウロスフェスティバル」ではギリシャ劇などが上演される。行ったのは1月だったが、舞台近くに大きなスピーカーが置かれ、何かイベントの準備をしているようだった。
ステージの中央にある丸い石板に乗ったガイドが「客席の角度がよく、音響効果が優れています」。英語・スペイン語ツアーなので、断片的にしか分からないが、たぶん合っていると思う。ここが舞台の中央で、声を出すと確かに音の響きがいい。シーンとしていたら、コインを落とすと客席の最上段まで聞こえるそうだ。
せっかくなので、客席の階段を上がった。なだらかな傾斜なので、上りやすい。上から見ると、すり鉢状になっている劇場が見渡せる。
階段を降りながら、客席を見ると、長方形の石をうまく曲線に並べている。
これもせっかくなので座ってみた。イスとして高さはいいのだが、やはり石なので座り心地はよくはない。座布団のようなものを敷けばいいだろう。
古代ギリシャの劇場は今も欧州各地に残っているが、その中でも一番保存状態がいいそうだ。エピダウロスは医療施設だと聞いていたが、なぜ劇場があるのか。「音楽を治療の1つとして利用していたから」という。
死者をよみがえらせる技で神の怒りに触れた
次に博物館に入った。この遺跡から出土した石像などが展示されている。
ガイドブックなどによると、エピダウロスは「アスクレピオス(Asclepius)の聖域」として栄えた。
神話によると、アポロンと人間の娘の子として生まれたアスクレピオスは、半人半獣のケンタウロスの賢者キロンに育てられ、医術を学んで死者をよみがえらせられるまでになった。これを知ったゼウスは、このままでは死ぬ者がいなくなって自然の掟が破られることを危惧。雷を投げ、打たれたアスクレピオスは死んだ。
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