アルベロベッロのトゥルッリ(イタリア)

メッシーナ港~ナポリ港~アルベロベッロ~アイア・ピッコラ地区~リオーネ・モンティ地区

白壁に円錐形の屋根。おとぎ話の家のよう、と形容される建物群のある街を聞いたことがあるだろうか。イタリア南部にあるアルベロベッロ(Alberobello)という。2017年、行ってみた。
シチリア島のメッシーナから船でナポリに渡り、夕日が沈もうとするころ、バスでアルベロベッロの街に入っていく。緩やかな丘陵地帯はたぶん、畑か牧草地だろうか。さっそく、その「丸いとんがり屋根」の建物がところどころに車窓から見かけられる。

この家は特別なものではなく、この地方では当たり前の家の作りのようだ。街中に着いた時は日が暮れていたが、世界遺産に登録されている家が立ち並ぶ地区の地図をもらって、夕食前に軽く散歩に出かけた。

円錐形の奇妙な屋根の家並み

円錐形の屋根を持つ建物は「トゥルッリ」(Trulli)と呼ばれる。街のメーンストリートをはさんで旧市街の「リオネ・モンティ」(Rione Monti)と「アイア・ピッコラ」(Aia Piccola)の2つに地区に集まっている。
約400のトゥルッリが建っているアイア・ピッコラ地区に行ってみた。あまり明るいとは言えない街灯にも、白壁はくっきりとわかる。
くねくねした路地を歩いていくと、右も左も、前も後ろもトゥルッリに囲まれる。住宅街なのだろうか、夜7時ごろだったが、シーンとしている。

道はよくわからなかったが、トゥルッリを見ながら歩いているうちに商店などもある賑やかそうな場所に出た。
とんがり丸屋根がいくつも連なったようなような大きな建物は、看板によると博物館だった。


そこから左に歩いていくと教会があり、展望台のようになっている。眼下に街のメーンストリート、その反対側の斜面にはトゥルッリが密集している。約1000のトゥルッリがあるリオーネ・モンティ地区。翌日にとっておくことにしてホテルに戻った。

税金対策の家は屋根1つに1部屋

翌朝、まず前夜行ったアイア・ピッコラ地区へ。曇り空だったが、白壁がきれいだ。円錐形の屋根の作りもよくわかる。
ガイドによると、15世紀ごろに農業によって街ができ始めた。街の名前は、アルベロは「木」、ベッロは「美しい」という意味で、このあたりには樫の木があったという。


トゥルッリは複数形で1棟は「トゥルッロ」といい、普通は何棟かをつなげて1家族のトゥルッリになる。「屋根1つに1部屋なので」(ガイド)と、3部屋必要なら3棟のトゥルッロをつなげないといけない。大家族は大変だ。


この奇妙な形になったかは諸説あるそうだが、有力なのは17世紀にこのあたりを支配したスペインの王が、家に漆喰やモルタルを使うと税金を取るというので、それを使わずに建て、税金の取り立てに来た時は屋根部分の石を取り払って「家ではない」と主張したという。


税金を逃れて、いなくなるとまた屋根を積み上げた。積み下ろしのしやすい形という訳だろうか。壁は石灰と水でつくり「厚さは1㍍以上。頑丈にしないと屋根が重いので崩れてしまう」とガイド。屋根に積む石は平たく割り、バランスを取りながら積み上げる。

ここでもやはり職人不足

最近では屋根を積める職人が減ってきているという。雨が少ないので直すまで屋根がなくても平気だったのだろうが、屋根から雨どいで地下の水槽に引き入れて、雨水をためるようにしている。雨の少ない地方ならではの工夫だ。

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