ハロン湾(ベトナム)

ハロン湾のシンボル

ハロン湾はその特異な景観もあって、たくさんの映画の舞台になっている。行く前にカトリーヌ・ドヌーヴ主演の「インドシナ」と「007黄金銃を持つ男」を見てから行った。ちなみにドヌーヴが通ったカフェがハノイ市内にある。
さて、クルーズ船内での食事が終わると「林立する奇岩」の本線に入る。巨大な奇岩(島)が両側に迫るところを抜けると、「水上村」があった。

文字通り、水上に家が立っている(浮かんでいる)。結構な集落だ。商店はもちろん、学校や公共機関の建物もあるという。嵐のときは大変だろうと思いながら、ゆっくりと通り過ぎた。

「ラブ・アイランド」という、ハロン湾のシンボル的存在の奇岩が、クルーズの折り返し点になっている。岩の周りには多くのクルーズ船が集結してきて、岩のそばに寄るのは順番待ちになる。

大きな岩が寄り添うように海から突き出ている。2羽のニワトリが寄り添っているように見える。左のごついほうが雄だという。雌の方が確かに姿かたちがきれいだ。

中国軍を追い払った竜が置いていった

ここから折り返していくと、奇岩だらけになる。大小1969の奇岩(島)があるというが、たぶんその1割ほども目にしていないのだろう。

この地形は石灰岩大地が沈降し、浸食を受けてできたという。中国との国境に近く、かつて中国に攻められたときに、竜が降り立って撃退し、吐き出した宝石が1つ1つの岩になったという伝説がある。
ハ(降りる)ロン(竜)の語源になっている。ちなみに、降りてきた竜が天に昇ったという場所がハノイ市内にあり、タン(昇る)ロン(竜)という。この話はまたの機会に。

「せっかく撃退したんですが、最近は中国が毎年1㌢ずつ国境を広げているので、将来はハロン湾は中国領土になると思います」とガイドがジョークとも、そうでないともいえない説明をした。ここでも中国の領土問題があるらしい。

これだけ奇岩が林立していると、航路も大変だ。ちょっと間違えると、迷い込んで戻れなくなることもあったという。
一度迷ったら戻るのは奇跡的、そんなシーンが映画「インドシナ」にも出てきた。それを逆手に利用して海賊の根拠地にもなっていた。

クルーズでは奇岩の中にいくつもある鍾乳洞の1つに立ち寄るようになっているが、その中でも一番きれいだという「ティエンクン洞窟」のある岩(島)に停泊した。

ライトアップされた鍾乳洞

船がぎっしりで、泊めるにも隣の船に接触しながら隙間をこじ開けるようにして泊まる。

ティエン(天)クン(宮)と名づけられたこの洞窟は、1993年に発見された。「おじいさんが台風から逃げようとして、穴から中に入って見つけました」とガイド。船着場から岩を上がって行く。

世界遺産に登録後、政府がその人から買い上げたという。かなり広さがあり、鍾乳石が象やライオン、竜といった形に見えるという。

青、赤、緑、紫といったライトアップがちょっと演出過多気味で気になったが、確かに鍾乳石のシャープさなどは見事ではある。おじいさんが入ったという穴からは、日の光が差し込んでいた。

かなり高いところにあるので、下りるにも苦労しただろう。進んでいくと、白雪姫と7人の小人やトムとジェリー(ネコとネズミ)、観音様など名前が付けられたさまざまな造形の鍾乳石がある。

ガイドがポインターで示してくれるのだが、あまりよくわからず、ちょっと無理やりの感がなくもない。ただ、鍾乳石のシャープさは奥に進んでもずっと見事だ。30分ほど洞内をみた。
洞窟を出ると、薄日が差していた。また、隣の船をこじ開けながら出港。帰路も奇岩を左右に見ながら進む。4時間弱ほどのクルーズだが、見ごたえがあった。

水上村に上陸したり、洞窟にカヌーで入ったりなどのツアーも出ているという。朝日、夕日もきれいだというが、見るには1泊した方がいいだろう。楽しみ方はいろいろあるようだ。

1994年登録

  1. この記事へのコメントはありません。