アントニ・ガウディの作品群(スペイン) コロニア・グエル教会
信者が座るベンチもデザインが凝っていて、これもガウディが作ったといい、全体のデザインの中に取り込まれているようだ。
内部の見事さに圧倒されているうちに、次のミサへの準備の時間が来た。「もう写真はやめてください」と、追い立てられるように外へ出た。
廃品利用の先駆者
外壁(ファサード)をみながら、階段を上に上がる。外側から見る窓(ステンドグラス)は、涙のような枠になっていて、周囲をガラスや陶磁器の破片でモザイク模様に飾っている。
やはりガウディが廃品をもってきたものだろうか。窓は教会全体で22あり、保護する格子には繊維工場の機織機で使う針とリングを使っているという。
外壁にはレンガとは別に妙なものがくっついている。音声ガイドによると「製鉄鉱滓(こうさい)」で、鉄を精錬したときに出るゴミのようなもの。これも廃材利用か。こうして使われるとりっぱな壁材だ。
階段を登りきると広いテラスに出る。本当ならここにサグラダファミリアのような塔をもつ「上部身廊」になる予定だった。
現在教会として使われているのは「下部身廊」というそうで、下部身廊の玄関枠を同じような石組みの門と、5つ作る予定だった鐘楼の1つが残されている。
教会は1908年に建設が始まり、1914年に玄関ポーチと下部身廊が完成後に工事は資金難のため中断。ガウディが最も気に入っていた建築だったという。
一時は未完の上部身廊部に全くデザインの異なる教会が建っていたそうだが、取り壊して未完は未完のままで「オリジナル」のデザインに戻された。
案内所に模型があった。急死したガウディにはサグラダファミリアもそうだが、未完成作品が多い。完成していたらと思うと、ちょっと残念。たぶん一番残念なのは本人だろう。
カタルーニャの人々の拠り所
「モンセラート(のこぎり山)」に寄った。ケーブルカーで上がった。中腹に建物が集まっている一角に、教会堂がある。
世界遺産には登録されていないが、教会堂には12世紀に羊飼いが洞窟で発見した黒いマリア像「モンセラート聖母」があり、信仰を集めている。コロニア・グエル教会にも祭壇があった。
19世紀初めにフランスのナポレオンがこの地を破壊したが、この像は信者が隠して守ったという。奥の祭壇の脇の行列に並び、ケースの外にでている右手に触れてきた。
バルセロナのあるカタルーニャ自治州は元々独立国家だったが、スペインに組み込まれた後は独自の文化や言語、思想を弾圧されてきた歴史がある。2017年10月、住民投票で賛成多数を得てスペインからの独立を宣言したが、スペイン中央政府との確執は深まっている。州を2分しているようで、今も不透明だ。
モンセラート、黒いマリア像は、そんな歴史を持つカタルーニャの人たちの聖地であり、心の拠り所となってきた。革新的な建築家ガウディは、そんなカタルーニャの風土の中で生まれたのだろう。
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