ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩石遺跡群(トルコ)

ユルギュップ~エセンテペ~パシャバー~デヴレント~ウチヒサール~ギョレメ野外博物館~カイマクル

「妖精の煙突」。想像力豊かなネーミングだ。カッパドキア(Kapadokya)にあるという。奇岩の谷、岩をくりぬいてつくった住居に、林立する「妖精の煙突」を見ようと思い、2004年、行ってみた。

イスタンブールからトロイ、パムッカレなどを巡りながら、日本縦断ぐらいしたのではないか、と思えるころ、夕暮れの中央アナトリア地方カッパドキアにあるユルギュップという街にたどり着いた。

翌朝、少し高台のホテルの近くを散歩しながら、白っぽい岩の上に広がった街並みをながめた。

妖精の煙突の不思議な世界

最初に行ったのが、通称「親子岩」という名前の付いた「エセンテペ」。帽子をかぶったような、というか、キノコのシメジのような、3つの岩。

大きな2つが父と母、母に寄り添うような小さな方が子供、に見立てているという。3本の「妖精の煙突」が作り出した不思議な世界に早くもひきずりこまれた。

妖精の煙突とは、その形から名づけられ、キノコ岩ともいう。本当に妖精が住んでいるという伝説もあるらしい。カッパドキアには数々の奇岩があるが、代表的な形がこれだ。

どうやってつくられたのだろうか。

数億年前、近くにある火山が大噴火を起こして、火山灰が高く積もり、長い年月を掛けて固まって凝灰岩の台地になった。その上に、また火山の爆発で飛ばされてきた玄武岩の岩が散らばった。

万単位の年月をかけて風雨の侵食を受けた結果、硬い玄武岩の下の凝灰岩は侵食を受けずに、軟らかい周囲の凝灰岩だけが削られて低くなったため、玄武岩を帽子のように残した岩がニョキニョキと立っている風景になったという。

火山灰層をよく見ると、白、ピンク、ベージュなど、微妙な色合いがあり、何度も火山噴火があって違った色の火山灰が降り注いだたことが分かる。凝灰岩は、意外ともろい。

岩にも触ってみたが、表面はザラザラしていて、こすると細かく剥げ落ちてくる。思わず、上を見上げた。よく玄武岩が落ちないものだ。絶妙のバランスを保っている。

 

もっとも「妖精の煙突」らしい光景が広がっているのが、パシャバー。上部の帽子が、三角帽のようにとがっている。高さ30㍍はありそうだ。ここまでくると、その光景は奇観ではなく美観といっていい。

今にも落ちそうな「帽子」の岩

ながめていると、つくづく変な形をしている。もちろん、1本1本、さまざまな形をしていて、同じ物はないので、見ていて飽きない。

このあたりの帽子は今にも落ちそうで、かなり危なっかしいものも多い。風化が進むとやがて帽子がなくなるのだろう。そのときに下にはいたくない。

夕日に染まる異空間

こうした、自然の造形はカッパドキアのいたるところにある。夕方、デヴレントという場所にいった。見渡す限り白っぽい岩の谷には、風雨の侵食でさまざまな形の岩が続いている。

ラクダのような岩、ろうそくのような岩、聖母マリア像のような岩…。角度によって、いろいろな表情を見せる岩が連なる谷に、夕日の柔らかい光が差し込み、映画に出てくる、どこかの星の世界に入ったようにも思えてくる。

もう1つの夕日スポット、ローズバレーは、夕暮れ時には岩が赤く染まるという。夕日が1日1回しかないのが残念。夕日を2回見られる方は両方に行けると思うので、うらやましい。

カッパドキアには、こうした自然の景観に加えて、軟らかい凝灰岩に人が手を加えてできた珍しい景観がある。2つの奇観をあわせて、カッパドキアの魅力が数倍にもなる。

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