シギリヤの古代都市(スリランカ)

シギリヤ~水の庭園~シギリヤ・レディ~ライオンのテラス~王宮跡

朝、ホテルのテラスから、こぶしを突きだしたような大きな岩山が見える。シギリヤ・ロック(Sigiriya rock)だ。

ホテルのテラスからのシギリヤロック

前日はコロンボからダンブッラを経て、夜遅くにシギリヤの街に着いた。小さな街の外側は真っ暗だったのでどこに何があるか分からなかったが、実はけっこう目の前にあった。高さ200㍍というが、周りに何もないので高く見え、しかも切り立った崖になっている。

どうやって登るのだろうか。その中腹の岩壁に描かれている「シギリヤ・レディ」(Sigiriya ladys)という、世界を驚かせた天女の絵を見ようと思い、2008年、行ってみた。

麓にあるのは水の庭園

シギリヤロック麓にある庭園と参道

 

シギリヤ・ロックの麓に着く。近くに来ると、やはり高い。ガイドは「そんなに疲れませんよ」と笑顔をみせる。

「登山口」に向かう広い道は、左右が庭園になっている。水はあまり入っていなかったが、長方形の池がいくつもある。道の真ん中には浅い水路があり「これが噴水です」と、水路の一角を指差す。

小さな穴が空いている石の板がはめ込まれている。水路に大量の水が流れると、その穴から水が吹き出ていたという。

「水の庭園」を過ぎるとゴロゴロした岩場になるが、これも庭園らしい。大きな岩の間を通って、登山口の階段にたどり着く。

1200段の階段を上る

ほぼ垂直とも思えるシギリヤ・ロックだが「登山は階段なんだ」と少し気が楽になったのもつかの間、ガイドは「1200段あります」と教えてくれた。

登り始めると、途中から岩壁にしがみつく、建築現場の足場のような通路も出てくる。しっかり岩に固定されているのだろうが、ちょっと不安な構造だ。

「空中散歩」の気分。疲れよりもそっちに気を取られて、気付いたら中腹にある「ミラー・ウオール(鏡の壁)」の入り口に着いていた。

なるほど確かにそんなに疲れない。そこから、筒状の狭いらせん階段を上がる。2本あるが、登りと下りに使い分けている。登り切ると「シギリヤ・レディ」との対面になる。

シギリヤ・レディの微笑み

「シギリヤ・レディ」は、いまから約1500年前、5世紀終わりのシンハラ王朝カッサパ王の時代に描かれたという。

劣化しにくいテンペラという画法を使い、岩のくぼみの壁面に描かれていたおかげで、風雨の影響をあまり受けず、色鮮やかにいまも残っている。

当初はシギリヤ・ロック全体に500体ぐらい描かれていたそうだが、いまはこのくぼみ周辺に20体あまりが残っているだけ。明らかにはぎ取ったという跡もある。通常のエリアで見られるのは6、7人だった。

天女と侍女ということだが、半裸で、表情も違い、描写も細部にわたってリアル。微笑みを浮かべ、ポーズも身のこなしがどこかエロチックで、食べ物を取っていたり、花(ハス)を持っていたり。

顔つきから行って、天女というよりは、当時実際にいた高貴な女性といったほうがよさそうだ。「天空の楽園」を地上に再現しようとしたのだろうか。

「間違って書いてしまったところも何カ所か、直さず残っています」と、1人の天女の右手を指さした。

実在したレディたちのモデル

身を乗り出して見ていると、奥の方で呼ぶ人がいる。行くと、通常は立ち入れないようにロープを張ってある内側から「入れ」という。

また建築現場の足場のようなところに入っていくと、壁面に「シギリヤ・レディ」。こちらのはちょっと不鮮明だったり、欠けた部分が多かったりしている。

明らかにはぎとられた跡が残っているものも。黒人のような天女画もあった。やはり実在のモデルがいたのだろう。

ガイドに言われてチップを渡し「修復でもしている最中か」と思って正規のルートに戻ったが、ガイドに聞いたら「足場が古くなっているので今は観光客は入れないようにしているみたい」という。先に言ってよ、落ちなくてよかった。

ミラー・ウォールの落書き

再び、らせん階段を下りると、ミラー・ウォールにでる。これも1500年ほど前につくられたものだという。できた当時は鏡のようで、反対側にいる人の姿が壁に映ったという。

下から見たときは、岩に黄色っぽい帯が張り付いているように見えた。蜂蜜などを混ぜた土でつくり、磨き上げられて、岩に沿うように曲線になっている。

麓から見たシギリヤ・ロックの中腹ぐらいにあるミラーウォール

 

そういうきれいな壁があると、落書きしたくなる不心得者は、今も昔も変わらないようだ。
よく見ると、壁面を削って書いた落書きがたくさんある。せっかくの「鏡面」を傷だらけになっている。これではミラーにはなりそうもない。

ガイドは「7世紀ごろに、シギリヤ・レディを見た人たちが感想を書いたそうです。落書きはよくないですが、おかげで今は使われなくなった昔の文字や言葉が分かったそうです」と、黒っぽくなって相当古そうな落書きを指さした。

そういえば、エジプトの大ピラミッドも内部の落書きでクフ王のものとされるようになったというし、マナー違反も1500年たつと貴重な「遺産」になるということか。
その古代の文字を上から消すような現代の落書きはいただけないが、あと1500年ぐらいしたらありがたがられるのだろうか。解読されたら恥ずかしい落書きのような気がする。

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