マテーラ(イタリア)

洞窟とは思えない造りの教会も

ドゥオモからサッソ・カヴェオーソ地区に入る。新市街は分かりやすい道だったが、旧市街は岩山の斜面を縫うように、細く入り組んでいるところが多い。周りにあるのはサッシ。家の前に石を積んで入口らしくなっているが、中に入ると洞窟になっている。

家の軒を支える部材がどう見ても骨だ。「このあたりでは木材があまりなかったので、牛の骨を使っていた」そうだ。

家だけではなく、教会も洞窟を利用してつくられている。「サン・ピエトロ・カヴェオーソ教会」「サンタ・マリア・デ・イドリス教会」が並んで建っている。

サン・ピエトロ・カヴェオッソ教会(左)と聖イリドス教会

ともに、11世紀ごろに造られた教会で、撮影禁止という事だった。外から見たが、サン・ピエトロ・カヴェオーソ教会は洞窟教会とは思わないほど、立派なファサードをしている。塔もあるので、言われないと洞窟教会とは思わないだろう。

そこから、階段を上っていくとサンタ・マリア・デ・イドリス教会。こちらは、岩を掘って造った教会という事が分かる。

2つのサッシ地区には130ほどの教会が造られたそうだ。内部にはフレスコ画が描かれている教会が多いという。

住環境としては良くなかった

サッシに住んでいた一般の人たちの生活を見られるのが「グロッタの家」。18世紀初頭、中世の農民の生活が再現されている。

中に入る。洞窟といっても、壁や天井がむきだしの石になっているだけで、普通の家の中とそう変わらないと思った。床は別の石が敷いてあるところもあった。

「窓が1つしかないので、換気が悪かったようです」という。また、家畜類も一緒に生活していたというので、環境的には良くなかったと想像できる。ロバの人形が置いてあった。

ただ、壁は軟らかい石なので、削れば部屋の拡張もできるし、棚もすぐ作れそうだ。寒暖の差も洞窟だと小さいだろう。

洞窟という特殊な環境もあってゴーストタウン化し、衛生上の理由で強制退去させられて廃墟となったサッシの街。今も、いくつかの教会や観光施設以外は使用されていないとのことだが、その独特な光景が世界遺産登録で再び脚光を浴びるとは、だれも思っていなかっただろう。

1993年登録

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