エフェス(トルコ)
イスタンブール~アルテミス神殿跡~エフェス~マリアの家
「世界七不思議」という言葉をよく聞く。紀元前2世紀にギリシャの旅行家フィロンが書き残した「驚嘆すべき」7つの景観で、ギザの大ピラミッド、バビロンの空中庭園、エフェスのアルテミス神殿、オリンピアのゼウス像、ハリカルナッソスのマウソロス霊廟、ロードス島の巨像、アレクサンドリアの大灯台。
現存するのはピラミッドだけだが、イスタンブール方面からパムッカレに行く途中にある「エフェス(Efes、エフェソス)」に、アルテミス神殿の跡がある。「ピラミッドもかすむ」といわれた壮大さ、壮麗さの面影はないが、柱が1本だけ積み上げられている。
かつての高さになっているかは分からないが、妙に寂しい感じだ。狩猟と貞潔を司る女神アルテミスは豊穣や多産の神でもあり、乳房をたくさんつけた姿の彫刻などを見ることがある。それは牛の睾丸という説もあるそうだが。
そんなアルテミス信仰を基にしたローマ時代の巨大都市遺跡エフェスが、神殿の近くに広がっている。世界遺産登録される前の2004年、行ってみた。
クレオパトラも滞在した巨大都市
トルコでよく飲んだビールが「EFES」なので、なじみのある名前だ。入口から遺跡に入ると大通りに突き当たる。アルカディアン通り(港通り)と呼ばれていて「かつてはすぐそばまで海が来ていたので、大きな港がありました。船でやって来てエフェスに滞在したクレオパトラ7世とアントニウスもこの道を歩いた」(ガイド)という。エジプト王朝滅亡前夜の話だ。
広い道の両側には多くの遺跡が点在する。かつては商店などが軒を連ねていたという。
アルカディアン通りを歩いていくと道の向こうに見える山の斜面に巨大な姿が見えてくる。「大劇場」で、2万5000人が収容できたとされる。ギリシャ、ローマ時代の劇場としては最大級。紀元前3世紀に造られたという。
ちなみにローマのコロッセオは5万人収容とされるが、あちらは剣闘士の戦いなどを見せた闘技場。劇場ではいわゆる歌劇などが催されていた。
客席の高さは最上段で38メートル、円形(半月形)の直径は158メートル。こんなに大きくて役者や歌手の声が届いたのかという疑問は、すぐに解消する。観光客の1人が大劇場の底、舞台があったと思われる場所でオペラ(たぶん)を歌い始めた。ちょうど客席の上の方にいたのだが、確かに声が響いて聞こえる。構造がいいのだろうか、2万5000人が入っても満足させたのだろう。
神殿、図書館から娼婦館までなんでもそろう
エフェスは元の姿を残している建物などはほとんどない。ただ、白大理石でできているものが多かったようで、柱1本でも青空に映えてきれいにみえる。
ガイドブックなどによると、ギリシャ時代の紀元前4世紀半ばに「後世に名を残したい」という羊飼いによって、アルテミス神殿が放火されて焼失した時にはすでにアルテミス信仰の街として栄えていた。
この記事へのコメントはありません。